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名古屋での2つの「一箱古本市」
店舗の軒先を借りて本好きな人が一箱ずつ古本を持ち寄って売る「一箱古本市」というブックイベントが、名古屋市内の2地区で開催された。「一箱古本市」の詳細については、先日報告した図書紹介ページ(文末にURL記載)を参照いただくこととし、当日の様子を中心にお伝えしたい。
○「一箱古本市in円頓寺商店街」
2010年3月20日(土)、昨年に続き2回目の開催で、名古屋市西区にある円頓寺本町商店街・円頓寺商店街のアーケードの下約400メートルにわたって一箱古本市が行われた。商店街に点在する空き店舗などの前に古書店を営むプロだけでなく「本屋さんごっこ」を楽しむ本好きな一般人の参加者も含めて小さな本屋さんが約50軒並んだ。一人3箱まで出店可能であるため、ミカン箱程度の箱で換算すると約100箱が並んだことになる。イベント時にはアーケード下の道路の車両通行が禁止されるため、本探しをしながらゆっくり歩くことができた。天候にも恵まれ、古本市目当てで訪れた人以外にも、四間道などの周辺の町歩きをしていた人も立ち寄ってイベントを楽しんでいた。通常の週末に比べれば多くの人で賑わっていたものの、昨年よりは人出が少ないと感じたが、とある店主に聞いたところ売上は昨年よりも良いとのこと。また、私が購入した本屋さんでは、オリジナルのしおりをサービスで付けていただいた。回数を重ねることによって買い手と売り手が上手にコミュニケーションをし、売上増という結果につながっているのかもしれない。
○「一箱古本市in覚王山」
円頓寺商店街での催しの2週間後の4月3日(土)に、名古屋市千種区の日泰寺参道を中心に約400メートルの区間で開催された。円頓寺商店街とは異なり今回初めての開催で、また完全な屋外での開催であるため、天候が最も心配されていた。風が強く肌寒かったものの晴天に恵まれ、参道に並ぶ店舗前の歩道(車道側)に小さな本屋さんが約40軒並び(箱数は約80箱)、多くの人で賑わっていた。初めての開催にも関わらず好調な人出になったのは、主催者の広報活動はもちろん、覚王山商店街の各店が店前に自身の古本を置くなどして積極的に協力していたことも影響していたと思われる。
2つの「一箱古本市」を訪れて、お気に入りの本を探す人、「本屋さんごっこ」を楽しむ出店者、軒先を貸す商店主など関係者全員がのんびりとした雰囲気でイベントを楽しんでいたことを共通して感じた。「本」を楽しむだけでなく、まちや商店街も楽しむことのできるイベントであるため、全国各地に広がり、回数を重ねることにつながっているのだと思う。
「一箱古本市」が覚王山で行われた4月3日は折しも米国で新電子端末「iPad」が発売された日である。電子書籍市場の拡大によって読書や紙の本をとりまく状況は今後大きく変化する可能性がある。しかし、まちや商店街で一般の本好きな人が楽しみながら参加もできる「一箱古本市」などのブックイベントは、ぜひ今後も続けていただきたい。
○図書紹介「一箱古本市の歩きかた/南陀楼綾繁 著」
http://www.spacia.co.jp/Mati/tosyo/hitohakohuruhonn.html
「一箱古本市in円頓寺商店街」の様子 空き店舗前での出店
「一箱古本市in円頓寺商店街」の様子 平積みではなく即席の書棚で販売する出店者も
「一箱古本市in覚王山」の様子 奥に見えるのが日泰寺
「一箱古本市in覚王山」の様子 参道沿いの店舗前の歩道上に出店
(2010.4.12/山崎 崇)