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歩いて暮らせる街づくりの展開 〜路地のたたずまいの保全〜

碧南市大浜地区

 碧南市大浜地区は、南北朝・室町時代から大浜湊の湊町として開けたという古い歴史を有するところであり、大きな寺院が多く点在するとともに、味醂・味噌などの特産品を生産する工場などの蔵が点在している。地区内には多くの路地があり、寺院、蔵など伝統的なたたずまいと一体となり、心地よい雰囲気を形成している。
 湊、寺、蔵、路地がこのまちの特徴であり、昔ながらの街並みを残している地区であるが、車の利用が不便であることや接道条件から建替えができないなどから人口が減少し、商業機能も衰退していた。このような中で、2000年3月に国の「歩いて暮らせる街づくり」のモデル地区として全国20箇所の1つとして選定されたことをきっかけとして、様々な主体がかかわるまちづくりが始まった。
 2000年秋からはじまった「大浜てらまちウォーキング」はすでに5回を数えるが、様々な団体がいろいろな催しをまちのあちこちで開催し、多くの参加者でにぎわう。まちなかに俳句が飾られたり、個人宅で自分のコレクションを公開したりと見所は多いが、特筆すべきは小学校の総合学習との連携であると思う。寺院や神社などで発表する子ども達の勇姿をみるため、家族はもちろん地域の人たちが大勢集まり、やさしいまなざしをむける。昨年秋の第5回では16箇所もの場所で発表が行われた。これらを見て歩くとまち全体を歩いてしまうしかけだ。
 本地区では建築士会の人たちが熱心にまちづくりに関わっている点も特筆できる。私が大浜地区のことを知ったのは建築学会で見学会を行ったことだが、この時も建築士会の人たちがまちを案内してくれた。大浜てらまちウォーキングでも街角フォトクイズなどを実施し、まちの魅力を紹介している。様々な助成などを活用した研究活動なども実施しており、今年度はハウジング&コミュニティ財団の助成をうけ、地区内のすべての路地を調査し、ビジュアル路地台帳を作成することも行っている。
 地区内の路地については、災害時の危険性が問題とされる一方で、静かなたたずまいを有しており、魅力的な景観を有するところも少なくない。「路地や細街路のたたずまいの保全・再生」が地域再生のテーマとしてあげられており、大阪市法善寺横丁の取り組みなど、路地の雰囲気を残そうという取組みが各地で行われている。愛知県でも、地域再生推進のための支援措置として位置づけられたことを受けて、その検討に入っており、大浜地区を検討対象地区としている。その調査を当社が担当することになり、以前から興味深いまちだと関心を持っていた大浜地区のまちづくりに関わることができた。
 車を使えないまちは不便であるが、そのことが地区の魅力を生み出している。不便さを享受し、そこに価値を見出す人が増えれば大浜地区のまちはもっと魅力的になっていくに違いない。防災性能を高めながらも、路地のよさを残す方策はあるだろう。大浜のまちづくりに注目していきたい。

参考
「全国路地のまち連絡協議会」という組織があり、美しい日本の豊かな生活空間である路地を保全し、再生し、創造していくために互いに連携し、協働していくことを呼びかけている。
http://www.mmjp.or.jp/jsurp/roji/roji.htm


寺楼の美しい西方寺


登録文化財に指定された
九重味醂の蔵


旧碧南警察署
市が所有し利用方法を検討中


歩いて暮らせる街づくりの看板


大浜てらまちウォーキング
個人宅で古時計展を開催

大浜てらまちウォーキング

寺の門を舞台に総合学習の発表会


独特の雰囲気のある路地


建築士会の活動で
伊勢河崎のまちづくりを学ぶ


(2005.3.21/石田 富男)