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路地からのまちづくり/西村幸夫 編著

学芸出版社/2006.12.30発行

 「潮目が変わった」と司波氏は説く。防災上危険があるとして否定されてきた「路地」、建築基準法の接道義務により4mに拡幅することが当然とされてきた路地、その路地が再評価されている。
 昭和レトロをもてはやす風潮が路地ブームの背景にあるが、郷愁だけが路地の評価につながっているわけではないと西村氏は説く。路地を取り上げて論じるということは、均質的画一的であり、機能的計画的であることを善とする20世紀の都市計画のを批判的に乗り越えることが可能なのかを自問することにつながる。路地はそのような問題提起として存在するのだと。

 本書には全国路地のまち連絡協議会のメンバーが多数執筆しており、路地を活かしたまちづくりに取り組む11地区の事例が取り上げられている。本書が出版されたきっかけとなった神楽坂での全国路地サミットに参加したのが縁で、碧南市大浜の取り組みを紹介させてもらうことができた。
 大浜では、歩いて暮らせるまちづくりに取り組む中で路地に着目し、そのたたずまいの保全をテーマにあげられてきた。3年ほど前からそのお手伝いをさせてもらっているが、課題は多い。そんな悩みも本書で紹介されている多様な取り組みをみると、こんな進め方もあるのだと参考になる。
 常に議論となる防災面についても、「文化のない細街路は災害に弱くとも、文化のある路地は災害に強い」と、防災の第一人者である室崎氏が路地の本質的防災論を説いている。中林氏の路地型防災まちづくりの提案は、これまでの密集市街地での取り組みを継承しつつ、新たな展開につなげていく手法として期待できるだろう。
 まちを歩くと魅力的な路地にあたることも多い。その路地を活かすことが新たなまちづくりの可能性を開くだろう。全国各地で路地に関心を持つ人が増え、路地を活かしたまちづくりが展開されることを期待したい。

 (2007.1.19/石田 富男)