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鞆の浦を訪ねて 〜2008年社員旅行in瀬戸内〜
  今年の社員旅行の3日目に訪れたのが、広島県福山市の「鞆の浦」である。(社員旅行1、2日目に訪れた直島・高松・金比羅山については、『直島・高松・金比羅山を訪ねて 〜2008年社員旅行in瀬戸内〜』をご覧ください)

 鞆の浦は瀬戸内海のほぼ中央に位置し、このあたりで潮の流れが変わることから、かつて沿岸航海が主流であった時代に、「潮待ち」の港として栄えた場所である。鞆の浦には、現在も由緒ある古刹や史跡が数多くあり、昔ながらの町並みが残されている。また、鞆の浦周辺は、1934年に日本で最初に制定された国立公園の一つである瀬戸内国立公園の代表的な景勝地でもあり、鞆の浦から見る瀬戸内海や、周辺の弁天島、仙酔島の景色は非常に素晴らしい。あの宮崎駿氏も社員旅行で訪れた鞆の浦を大変気に入り、「崖の上のポニョ」の舞台になった(実際、2ヶ月間滞在して構想を練っている)とも言われている。
 鞆の浦には数多くの歴史的名所があることもあり、地元のガイドさんの案内で史跡を巡った。そこで最初に訪れたのが「福禅寺・対潮楼」である。対潮楼(江戸時代に建立)は、本堂に隣接した客殿であり、かつて朝鮮通信使の宿として使用され、文化交流の場でもあった。客殿からは、瀬戸内海に浮かぶ弁天島と仙酔島が望め、その景色は一枚の絵のようで、非常に印象的であった。また、この景色と同じくらい印象的であったのが、対潮楼からの眺めと暦の関係について語っていた福禅寺の和尚さんである。話し方に独特のリズムがあり、その語り口調はしばらく私の耳から離れなかった(どんな語り口調だったか気になった方は、鞆の浦を訪れた際は是非、福禅寺へ・・・)。その他、国の重要文化財に指定されている「太田家住宅・七卿落遺跡」や江戸時代から続いている地酒の保命酒屋、1859年に建立されたといわれる常夜灯などを回った。
 鞆の浦には、古くからの史跡や建造物、円形港湾など、かつての潮待ち港としての面影を感じることが出来る貴重な景観が数多く残っている。ところが最近、交通渋滞の解消や利便性を目的に、港湾に橋を架ける計画が持ち上がっている。常夜灯と瀬戸内海の間を道路が通ったら、折角の風情ある景観が損なわれてしまうと思うのだが、ガイドさんの話では意外にも地元住民の8割が架橋に賛成しており、反対意見の多数は外部から上がっているとのこと。しかし、既に反対署名は9万人を超えている。利便性を優先するのか、古くからの情景を守るのか、今後の動向に注目したいと思う。

福禅寺・対潮楼からの眺め(手前が弁天島、奥が仙酔島)

潮待ちの港「鞆港」
古い建造物と鞆の浦のシンボルでもある常夜灯(通称:とうろとう)
太田家住宅の外観
情緒ある石畳の路地
  (2008.7.22/喜田祥子)