アジアにぎわい
竹内 郁
<見出し>
釜山 海岸のにぎわい
バンコク 水上のにぎわい
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釜山 海岸のにぎわい
ソウルに次ぐ韓国第2の都市、釜山は、韓国国内最大の港町である。ソウルから特急列車セマウル号で、4時間。洗練された大都会ソウルに比べ、まちを行き交う人々の声も心なしか大きい。まちに出てみると、小売店が非常に多く、活気に満ちている。いうなればソウルと釜山は、日本の東京と大阪の関係によく似ている。
市街地から海岸沿いに北上すれば、韓国随一の海水浴場、海雲台(ヘウンデ)がある。1年を通して大勢の人でにぎわう観光地である。朝から夜まで、海岸を散歩する人がとても多い。また、結婚の記念写真撮影場としても名高い。(韓国のカップルは結婚記念アルバム作りに熱心だそうだ。)
昼を過ぎると、海岸には屋台が建ち並ぶ。海外線に沿って並ぶ屋台は韓国一の数を誇る。調理場のテントが切れ目なく続き、その前に海に面して折り畳みのいすと机が数組ずつ並ぶ。決して豪華ではない。またそこで出される海鮮料理は有名だが、かなり高い。しかし、驚くほどたくさんの人が集まってくる。座ってみるとなかなか悪くない。安い魚ばかり注文すると、露骨にいやな顔をされた。
夕暮れになると屋台のテーブルにろうそくの灯がともされる。どこからやってきたのか、旅行者ばかりでなく、会社帰り風のグループも見受けられる。
そして波打ち際では日本と同じく若者達が座り込んでいる。印象的だったのは彼らの行動である。砂を掘り、ろうそくを立てて灯をともす。波打ち際に点々と続く灯は幻想的である。
灯に照らされた人の顔が輝く。とりたてて大がかりな装置があるわけでもなく、のんびりとしたにぎわいが、そこにはあった。
バンコク 水上のにぎわい
バンコクはタイの首都、水の都として、水上マーケットの朝市、黄金の仏教寺院等日本人の観光コースとして人気が高い。
かつて”東洋のベニス”とうたわれたバンコクではあるが、近代化と共に運河は埋め立てられ、街は一変してしまった。しかしチャオプラヤー川(メナム川)今も、雄大な景観を持ち、観光客である我々を充分に感動させる。
朝7時、チャオプラヤー川から、運河を巡る水上タクシーに乗ってみた。木造の細長い水上タクシー(ロングテイルボート)は轟音をあげながら、水面を飛ぶように走る。船頭さんの握るオールの先についたスクリューを回すのは、日本車に積まれていたエンジンだという。そのスクリューを水に出し入れすることで、スピード、方向を調節する。船の両縁には簡単なゴムシートが張られ、水しぶきの進入を、最小限に押さえてくれる。こちらが悲鳴を上げればあげるほど、船頭さんはスピードを増すのだからたまらない。すれ違う同じ様な観光客を乗せたボートから、やはり歓声が上がる。
ついたのはワットサイ水上マーケット、昔は生活に根ざした朝市が繰り広げられたが、今やマーケットとは名ばかりで汚れた水がよどんでいる。あまりの寂れように最近では、ガイドツアーもワットサイを外しているとか。と、目の前のゴムシートが外から押し下げられた。真っ黒に日焼けした物売りの女性がほほえみかけてくる。「絵ハガキ、1,000円ヤスイ」音もなく横付けされた、小さな船に積まれているのは色とりどりの果物と、麦わら帽子である。後方のガイドから「良いものあまりないです。買わない方がいい。」と声が飛ぶ。
交通渋滞の著しい道路に比べ、水上は程良くにぎわっている。手を振りあう旅行者達、朝日に輝く寺院、魅力的な一時であった。