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スペーシア・メールマガジン(隔週発行予定)  □[第435号]2017/3/31□    □配信数 733□


スペーシア・メールマガジンの第435号をお送りします。
名古屋からの情報発信とともにまちづくりのネットワーク形成をめざしています。
今回、はじめて送信させていただいた方もよろしくお願いいたします。

<内容・目次>
 ◆住まい・まちづくりコラム◆
 ・公立図書館を見つめて
 ◆図書紹介◆
 ・洋泉社MOOK「図書館へ行こう」
 ◆読者の声◆
 ◆スペーシアのこの頃◆

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◆住まい・まちづくりコラム◆
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○公立図書館を見つめて○

 公立図書館は、読みたい本を無料で借りられたり、調査研究などで調べものをしたり
するなど市民にとって身近なサービスというのが一般的な認識だと思う。これまでの
自分を振り返ってみて小学校の頃は図書館に月に何度か足を運んでいたが、中学生
から高校生にかけては部活に明け暮れて図書館から遠のき、大学で研究論文を作成する
時期になり、文献を調べたり昭和初期の新聞記事をマイクロフィルムで調べるために
再び図書館に通うようになった。そして現在は、仕事で調べものをしたり専門書などを
借りるために年数回ペースで利用する程度となっている。
 図書館については本を借り、文献を調べる所という程度の認識だったが、近年、図書館に
関する調査検討に関わることがある中で、全国の幾つかの図書館を視察し、いろいろ
工夫をしながら運営していることについて理解を深めてきている。これまで収集してきた
情報を利用者目線で整理してみたい。

■図書館法
1950年制定、社会教育を推進するため、地方公共団体や公益法人等が設置する公共
図書館について規定した法律。

■全国共通の課題−子どもの読書推進
図書館に関わる人なら当たり前の情報ではあるが、文部科学省が進める施策の一つ
「青少年の健全育成」の中で、子どもの読書活動の推進が大きな課題としてある。多様な
情報メディアの発達等により子どもの読書離れが深刻になる中、議員立法により2001年
12月に「子どもの読書活動の推進に関する法律」が公布・施行されており、この法律が
対象としている18歳までの子ども向けの活動に力を入れる自治体は多くなっている。

■図書館運営を支えるボランティア
従来から子どもの読み聞かせ、視覚障がい者の情報支援(音声化、点字資料作成、
対面朗読など)をボランティアが支える公立図書館は各地にある。近年は、本の整理や
本の修理など図書館職員の作業を手伝うボランティアがいるところもある。

■自治体内における図書館の連携
〇中央図書館集約タイプ−岐阜、四日市、岡崎、一宮、春日井をはじめ全国多数
 中央図書館に専門書や地域資料をはじめ大半の蔵書を集約させて残りを分館に
しているところ。このタイプは中核都市などを中心に全国に多数ある。
〇生活拠点分散タイプ−名古屋、さいたま、仙台、豊中など
 名古屋やさいたまの場合、中央図書館はあるものの市域にくまなく図書館が配置され、
名古屋で21か所、さいたまで28か所ある。仙台、豊中は中央図書館という位置づけは
されていないようで、仙台7か所、豊中9か所ある。
  これらの自治体の中には、鉄道駅周辺の整備に合わせて図書館も新設・再整備され、
利用度が高い施設がある。27年度の年間個人貸出人数をみると、名古屋−徳重図書館
(27.8万人、市内2位)、東図書館(21.8万人、市内4位)、さいたま−中央図書館(47.0万人、
市内1位)、豊中−千里図書館(28.4万人、市内1位)など。これらの特徴は、徳重図書館
(区役所支所、アピタ等併設)、東図書館(スポーツ施設併設、近隣にイオン、ナゴヤドーム)、
千里図書館(市役所出張所、老人福祉、老人保健、公民館等併設)となっており、鉄道駅
直近というだけでなく複合施設として整備されている事も注目できる。中央図書館に
集約されているタイプの中でも、駅構内に整備されて利用度が高い岐阜市立図書館の
分館(26年度15.1万人、ぎふメディアコスモスへの移転前の旧本館の3倍で市内1位だった)
のようなケースもある。

■図書館不便地域をカバーするためのサービス
〇移動図書館
図書館へのアクセスが不便な地域を移動図書館車両で巡回するサービスで、結構古くから
様々な自治体で行われているが、近年、実施している自治体が減少してきている。東海地方
では名古屋、四日市などで実施されている。
〇公立学校図書室との連携
横浜市の調査季報88号(1986年2月)によれば、戦後、自治体内の地域の核として学校施設の
開放の流れがある中、公立学校の図書室を開放するべく神戸市で1969年に実施したのに
はじまり、練馬区1977年、札幌市1978年、横浜市1980年などから実施されるようになった。
近年は、総合学習の実施、地域や家庭と学校との連携など新たな課題がある中で、
公立図書館と連携し、土日などに学校図書館として開放するケースが増えてきている。

■図書館の電子化
〇閉架書庫の自動化
近年、図書館の建替え、リニューアルに合わせて閉架書庫を自動化書庫として整備する
公立図書館の事例が出てきている。多くの図書館では既にネット検索により自宅のパソコン
から、あるいは管内の検索用端末から容易に資料を検索できるようになってきており、
閉架書庫であっても窓口で申請すれば結構早く書庫から取り出すことができる(視察した
ところでは約90秒〜2分以内)。施設側にとっても閉架書庫のスペースをコンパクトにできる
とともに図書館職員の作業省力化にもつながる。東海地方では、桑名メディアライブ、
岡崎市図書館交流プラザ、一宮市中央図書館、おおぶ文化交流の杜図書館などで導入
されているが、いずれも開架スペースが充実している。
〇電子書籍貸出サービス
スマートフォンやタブレットなどの普及により情報端末がより身近に、便利に使える中、
図書館と縁遠かった人を近づけるなどの目的で電子書籍の貸出サービスの普及が
図られているが、国内では貸出タイトルの少なさや出版会社からの供給が進まないこ
となどの問題があり、電子図書が読める公立図書館は全国で33図書館と少ない
(2015年5月現在)。

■複合施設の集積メリットを生かした図書館
 図書館の利用者目線で複合したことによって気軽に利用しやすいと思われる施設を2つ。
1つ目は武蔵野プレイス(東京都武蔵野市)。図書館を中心に生涯学習支援、青少年活動
支援、市民活動支援の4つの機能を併せ持った施設で、地上4階、地下2階建て。地下2階が
青少年の居場所や音楽スタジオ等の活動場となるティーンズスタジオ、地下1〜地上2階が
図書館でレストラン併設、地上3〜4階は生涯学習支援、市民活動支援のスペースとなって
いて、図書館単館では需要に対応し切れない学習スペースを館全体でカバーし提供している。
2つ目は塩尻市市民交流センター「えんぱーく」(長野県塩尻市)。ここは再開発ビルで、
図書館、子育て支援センター、市民交流センター(会議室、多目的ホール、音楽練習室等)、
市の観光セクションなどが入り、一部は民間テナントも同居する。図書館の児童コーナーと
子育て支援センターが併設していたり、図書館の窓口を出れば交流スペースで学習する
こともでき、1uから貸し出す市民サロン(共用スペースを活用)のようなスペースもある。
建物のハード面でも、通常の太い柱ではなく構造壁のような構成になって施設内の壁が
少なく、全体にオープンな空間となっている。

  以上、とりとめなく公立図書館の特徴について整理してみた。この他にも例えば地域資料
(豊田市図書館の自動車関連資料、多治見市図書館の陶磁器関連資料など地域なら
ではの資料の収集度)、全体の運営方法(直営、業務委託、指定管理など)、大学図書館
との連携、市民参加の仕組み、ユニバーサルデザイン、公共交通との連携など整理
できそうな項目は幾つもある。今後、さらに視察する事例を増やすことができれば、新たな
視点で公立図書館を紹介しようと思う。
(浅野健)
→ホームページに写真を掲載しています。
http://www.spacia.co.jp/Topic/column/tosyokan/

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◆図書紹介◆ −まちづくりに参考になるものを紹介−
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○洋泉社MOOK「図書館へ行こう」○
 洋泉社/2016年5月18日発行

 本書は、全国に6000以上もの図書館があると言われている中、人気の公共図書館から
個人蔵書を開放した小さな図書館まで個性的な図書館を約90施設以上紹介している。
映画「図書館戦争」に出演した女優・栗山千明さんが表紙を飾っており、雑誌感覚で
読める資料となっている。
 図書館を題材として、建築美が光る公立図書館、地域住民に愛される公立図書館、
あるいは大学図書館、専門図書館など幅広くおさえられている。また、商店街の図書館、
駅の図書館、歯科医院の図書館などまちなかの小さな図書館まで扱っている。さらに、
図書館と書店が並ぶ埼玉県桶川市のケースなど従来ではありえなかった事例も紹介
している。単に本を借りる、調べるだけでなく、図書館を拠点に人と人が交流する、地域が
元気になる、そんな事例がふんだんに紹介され、「図書館の仕組みと役割Q&A」「名物
館長に訊け!」「図書館なんでも雑学10!」などのコーナーも充実している。個人的に
感銘を受けたのは、本書では数少ない海外事例としてニューヨーク公共図書館が紹介
されていて、その経営母体が自治体ではなく独立行政法人で、民間の寄付、イベント
による収益、多くのボランティアにより支えられているということだった。庶民のための
図書館という設立当初からの理念を守りつつ、空間としては欧米各地でみられるような
威厳ある空間なのだ。こんな図書館が日本にもあればぜひ頻繁に通いたいと思う。
 こうしてみると、47都道府県に必ず注目できる図書館がありそうで、自治体の個性を
出せる施設の最たるものが公立図書館ではないかと感じさせる。これから各地に
出かけたら必ず図書館に立ち寄ることにしようか。
(浅野健)

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◆読者の声◆ −みなさんからいただいた感想や意見を紹介−
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(みなさんからのご意見・ご感想をお待ちします)

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◆スペーシアのこの頃◆ −所内の話題をちょっと紹介−
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