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スペーシア・メールマガジン(隔週発行予定)  □[第427号]2016/12/13□  □配信数 732□


スペーシア・メールマガジンの第427号をお送りします。
名古屋からの情報発信とともにまちづくりのネットワーク形成をめざしています。
今回、はじめて送信させていただいた方もよろしくお願いいたします。

<内容・目次>
 ◆視察レポート◆
 ・バルト沿岸都市視察調査 3
 ◆図書紹介◆
 ・秘められた名古屋 訪ねてみたいこんな遺産
 ◆読者の声◆
 ◆スペーシアのこの頃◆

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◆視察レポート◆ −まちづくりに参考になるものを紹介−
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○バルト沿岸都市視察調査 3○

 以下の文章はすでにフェイスブックで掲載していますが、つながっていない方々のために、
若干アレンジして再掲することとしました。今回は3回目となります。

V−ヘルシンキ
■フィンランドとヘルシンキの概要 
 フィンランドの人口は550万人弱(2016)で、デンマーク(560万人)より少なく、ノルウェー
(510万人弱)より多い。北欧諸国の人口は多くなく、先に述べた国々は愛知県よりも
少ない。国土面積33.8万kuと日本より少し小さい。
 フィンランドの産業は森と湖の国らしく、森林資源を活かした製紙・パルプ・木材が中心で
あるが、あわせて情報産業の盛衰がフィンランドの経済成長を左右している。ノキアの
成長はフィンランドの成長であったが、アイフォーンやサムスン等に押され、選択と集中が
なされた。最近ではソフトバンクの株売却で有名になったスーパーセル(スマホゲーム
「クラッシュ・オブ・クラン」が代表)の本社がある。オープンOSのLINUXもこの国であり、
ファブリックのマリメッコもブランド力を持っている。 ヘルシンキはフィンランドの首都で
人口は62万人(2015)である。
 訪問した6月末(6月20日から26日の土曜日、すなわち6月25日)は夏至祭の日を含んで
いたので、その2〜3日前から多くの店は閉じられ、また小雨が降ったこともあって、にぎわいに
欠ける都心であった。この都心で関心を持ったのは主に二つ。一つは街区内の中庭共用
空間の活用とパサージュ、もう一つはモールや公園をはじめとする公共空間の活用の二つで
ある。

■街区内の共用空間の活用とパサージュ
 ヨーロッパ諸都市の都心では街区を囲むように建築物が配置され、街区中央部等で
生まれる中庭は、共用空間であり、私的領域ではあるが一種の公共的空間となる。名古屋で
言うなら会所(閑所)であるが、それよりも規模が大きい。そこでは、まったくの開放空間の
場合もあるが(その場合は比較的低い建物で囲われている)、ガラス屋根が架かり、雨の日も
傘を差さず楽しめる空間が形成され、多くはカフェ・レストランとして利用されている。一種の
商店街のアーケード的であるが、通路というより、中庭的である。形状は個々の中庭空間に
よってまちまちで、密閉空間でなく半開放空間のものが多い。表通りから中庭空間に行くには
ビル内の通路が通っていくことになる。ビルは閉館されていても、通路は通行可能で、その
通路に向かって店舗が開かれている場面は多々ある。
 一般的にパサージュは、ガラス製屋根の通路の両側に店舗が並ぶ商業空間を言うが、
中庭に向かっていく通路もここではパサージュとよぶ。
 このような空間があることによって、表通り・通路(パサージュ)、中庭といった多様な
屋外空間を提供し、歩いて楽しめる都心空間を形成する。このような空間は、観光客は
もとより、ビジネスパーソンもコミュニケーション空間を提供する。クリエイティブクラスが
集まる都市が成長するとしたリチャード・フロリダは、著書「新クリエイティブ資本論」で
「場所の質(Quality of Territory)」を取り上げている。その場所では@建物と自然が融合し、
A多種多様な人材の存在と相互に影響しあう開放的なコミュニティがあり、Bストリートライフ、
音楽、芸術、カフェ文化、アウトドア活動の人々が、アクティブとクリエイティブな取り組みが
行われている、そのような活動が存在することを差す。その場所は都市レベルのものから
ストリートレベルのものまで多様に考えていいであろう。
 名古屋の都心栄エリアの活性化を考える場合、拡充された会所(閑所)の今日的活用が
大きなテーマになるようだ。

■モール等の活用
 ヨーロッパ都市の都心には、自動車を排除した歩行者専用の通り=モールがある。
当初は自動車に占用されていたが、安心して歩ける空間こそ人々が集まる事例の積み
重ねで、どんどんモールが広がってきた。ヘルシンキ中央駅とエスプラナーディ公園とを
結ぶ南北のケスクス通りは、二段階に分け自動車を排除してモールを実現した。そこには
大型店・専門店が並び、路上ではカフェあり、露店あり、演奏ありと多様な活用がなされて
いる。マリメッコの店(生憎夏至祭で閉店)では、休憩できる?クッションが店先に5つも
置かれていた。モールは着実に延長を伸ばしている。
 エスプラナーディ公園では本格的なレストランやカフェ、大道芸人が活動できる場、
樹木のアートなど、楽しめる公園として整備されている。その延長上にマーケット広場と
オールドマーケットの商業施設(ここも夏至祭で休館)が配置され、自然と人々は港の方に
足を運ぶようになる。
 冬場は厳寒でとても屋外でコーヒーなどが飲めないが、おそらく春秋の気候のいい季節の
ために、モールが整備されてきている。デンマークのコペンハーゲンでも初めてモールを
導入するにあたって、新聞で寒いこの国では普及しないであろうと論評されたが、結果は
市民に好評であり、どんどん延伸されていった。屋外空間の楽しさは誰もが求めるのである。
(井澤知旦)

→ホームページに写真を掲載しています。
http://www.spacia.co.jp/Mati/sisatu/2016/helsinki/

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◆図書紹介◆ −まちづくりに参考になるものを紹介−
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○  秘められた名古屋 訪ねてみたいこんな遺産/  ○
 水野孝一・粟田益生・冨永和良・水谷栄太郎・小宅一夫・山田和正 著
 風媒社/2015年12月25日発行

 名古屋市が「魅力のない都市1位」になったとして、各メディアで話題になった。これは、
名古屋市観光文化交流局が全国主要8都市(札幌市、東京23区、横浜市、名古屋市、
京都市、大阪市、神戸市、福岡市)を対象に行った都市ブランド・イメージ調査(平成28年
6月実施)による。名古屋市は、「買い物や遊びで訪問したいか」の項目で圧倒的最下位、
「最も魅力的に感じる都市」の項目で名古屋市民からも支持を得られないなど、不名誉な
結果となった。
 この結果を受け、名古屋市が市民を対象に行ったネット・モニターアンケート(10月実施)
では、訪問意向が最下位であることに関して「残念だが仕方がない」が約6割、「当然と思う」
が約2割を占めた。
 2つのアンケートを通して、多くの名古屋市民が自分の住む都市に魅力を感じていない
ことが明らかになった。これは、今後のシティプロモーションを考えるうえで大きな課題
である。「(訪問意向最下位は)当然と思う」と答えた理由として、「象徴的な建造物や
まちなみがないから」が約6割、「歴史が感じられないから」が約4割を占めた。しかし、
産業都市として栄えている名古屋にも歴史的な文化遺産は数多く残されている。名古屋
市民が名古屋の魅力を自覚するためには、まちなみに残されている歴史を知り、シビックプ
ライドを高めることが必要なのではないだろうか。
 そこで、この本『秘められた名古屋 訪ねてみたいこんな遺産』を紹介したい。これは、
平成25年度の名古屋都市センター市民研究員がまとめた研究報告『那古野まち歩き
新発見』に、追加取材を加えて再編集したものである。名古屋城築城に伴う清須からの
まちぐるみの移転「清須越し」や、熱田神宮に伝わる楊貴妃伝説など、身近な歴史遺産を
多く紹介している。筆者の一人水野氏は、名古屋最古の民間企業「鍋屋」の現当主である。
水野家は信長の朱印状を得て鋳物業を営み、清須越しも経験した伝統ある旧家である。
 そんな職人気質な筆者らが自ら名古屋を歩くことでまとめたこの本は、マニアックで
こだわりのある一冊となっている。名古屋市在住の人、名古屋の歴史を感じたい人、
もしくは名古屋を極めたい人にはぜひ読んで、現地に足を運んでいただきたい。きっと、
名古屋の魅力を再発見できることだろう。
(日高史帆)

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◆読者の声◆ −みなさんからいただいた感想や意見を紹介−
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(みなさんからのご意見・ご感想をお待ちします)

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◆スペーシアのこの頃◆ −所内の話題をちょっと紹介−
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・先日、このメールマガジンでも紹介した三重県桑名市の諸戸徳成邸・特別公開に
 足を運びました。諸戸徳成邸は諸戸清六(2代目)の別邸であり、すぐ近くには
 初代諸戸清六が敷設した諸戸水道貯水池遺構もあります。
 地元紙にも掲載されましたが、先日の特別公開が最後になる可能性が高いようで、
 貴重な文化財級の建物を見学し、いろいろ考えされられました。
 (T.A)

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を活用し、様々な意見交換等を行うことによって、より深いネットワークが形成できれ
ばと考えています。 様々なご意見や情報もお寄せ下さい。このメールマガジンに掲
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(株)都市研究所スペーシア 編集:浅野 健
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