スペーシア・メールマガジン(隔週発行予定) [第359号]2014/4/14□ □配信数 733□
スペーシア・メールマガジンの第359号をお送りします。
名古屋からの情報発信とともにまちづくりのネットワーク形成をめざしています。
今回、はじめて送信させていただいた方もよろしくお願いいたします。
<内容・目次>
◆視察レポート◆
・霧にむせぶ桂林 急成長のパワー
・朝倉彫塑館
◆読者の声◆
◆スペーシアのこの頃◆
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◆視察レポート◆ −まちづくりに参考になるものを紹介−
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○霧にむせぶ桂林 急成長のパワー○
はじめに
昨年度2月に(2014.2.22−25)、桂林市に行く機会に恵まれました。海道清信先生
(名城大学都市情報学部教授)の呼びかけで、桂林理工大学との研究交流を中心に、
桂林市の都市開発や臨桂新区(ニュータウン)の視察を兼ねて訪問しました。大阪産業
大学の吉川耕治教授+留学生の4人のメンバーです。名城大学と桂林理工大学とは
研究協定等が結ばれ、かつ留学生(修士)に桂林市出身者がありこともあって実現した
視察です。というのも、漠として訪問してもほとんど情報を得ることができませんが、
大学や留学生のネットワークがあって、なんとか情報を得ることができるというものです。
桂林市の概況
桂林市(565ku/日本との比較では市でなく県レベル)は人口80万人、大桂林都市圏
(27,000ku)では530万人です。桂林と言えば岩山の間を流れる漓江を一艘の舟が
ゆったりと滑って行く水墨画のイメージが定着していますが、それは郊外であり(今回は
季節柄、行けなかった)、桂林の市街地は大都市で、自動車、オートバイ、人々で賑わって
います。そして市街地の至る所に岩山が高く聳えている、不思議な風景が広がる都市です。
世界的な観光都市の一つであり、気候が穏やかなためか、ここに老後は住もうという人も
多いそうです。われわれが訪問した時期は梅雨のように毎日が雨で、岩山が霞んでみえて、
次回は天候のいい時に来ないとそのことは実感できません。
都市のインフラや町並み
都市インフラの水準は高く(社会主義国は強権があるのでインフラの整備水準は高い)、
例えば主要幹線では中央分離帯があり、片側車道3車線、自転車・電動バイクレーン、
歩道であり、車道と自転車・電動バイクレーンの間に街路樹が連なっています。ゆったり
とした道路空間(50m幅員か?)を確保しています。電動バイクの普及率は高く、2000元
程度(日本円で4.5万円程度)で買えますが、どうも馬力小さいようで、坂道は喘ぎながら
走るし、客乗せバイクタクシーはすべてガソリンバイクでした。
道路沿いの建物の1階は原則店舗(物販・飲食・サービス)であり、今のところ空き店舗は
ほとんどない状態です。これは規制により1階原則店舗となっているのかどうか、まだ
情報不足です。が、そうなら、過剰店舗になるので家賃は安くならざるを得なくなって、
チャレンジショップ的な店舗も生まれてくるような気がします。街のにぎわいにとっては
不可欠な要素と言えます。
ニュータウン臨桂新区
桂林の中心部から自動車で1時間のところに臨桂新区と称するニュータウンがあります。
面積1,500ha、人口30万人の大規模ニュータウンを10年程度で完成させようという計画です。
地方都市でもそれほど急成長していることが見て取れます。高蔵寺ニュータウン(702ha)や
泉北ニュータウン(1,557ha)は20年以上の歳月がかかって事業が収束していることと
比較すれば、スピードの違いが明白です。スピードが速いほど、若い同階層の居住者が
大量に入居するため、日本でも問題になっている課題、一気に高齢化が進行することに伴う
問題(コミュニティの活力や空間としてのバリアフリー)を内包しているといえましょう。そして
ニュータウン計画が、公園を除き、すべて都市的土地利用で埋めているため、変化に
対応する余地がなくなっています。計画のしすぎが課題となっています。この点については
大学の研究者達も問題意識を持っており、規模、スピード、計画内容をどのレベルで
対応することが、桂林市の抱える課題に応えていけるのか、悩んでいるところです。
社会主義国だから、あらゆる面で遅れているとは誤解です。むしろ公権力が強く、既得権が
少ない分野は日本より進んでいる場合があります。情報通信ネットワークや太陽光発電等
スマートシティ対策がそれです。街なかの喫茶店でも、多くが独自のwifiをもって、無料で
提供しています。ただし、桂林中心市街地と臨桂新区を結ぶ交通インフラが弱く、自動車に
頼らず鉄道系の対応が求められています。
桂林理工大学での講義
桂林理工大学で200人ほどの学生を相手に講義をしてきました。私のテーマは産業観光
でしたが(ちなみに海道先生はコンパクトシティ、吉川先生は都市交通-LRT)、ハイレベルの
通訳の先生がおられたこともあって、誰ひとり寝ることもなく、目を輝かせて聴講していました。
昨日より今日、今日より明日、暮らしが良くなるという高度経済成長の只中にあるのか、
学生の意気込みを感じることができました。日本もそういう時代があったわけです。中国は
日本の11倍の人口を有しているので、すごいエネルギーを秘めています。日本の今の若者に
いかに夢(打ち間違いで「嫁」と打ってしまった。少子化対策上あながち間違いではないか)を
持ってもらうかは我々世代の課題でしょう。
おわりに
日本の経験は高度経済成長の中国に活かせるのか、あるいは中国での最先端の取組みは
日本の参考になるのか、まだ研究の緒に就いたところです。草の根でつながって、研究を
はじめとした交流を深化させていきたいものです。なお、大学での講義ではちゃんと笑いを
取ってきました。笑いのツボは万国共通なのではないかと確信しております。
(井澤知旦)
→ホームページに写真を掲載しています。
http://www.spacia.co.jp/Mati/sisatu/2014/keirin/
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○朝倉彫塑館○
朝倉彫塑館とは、東京都台東区にある 彫刻家 朝倉文夫 のアトリエ兼住居だった建物で、
現在、台東区立朝倉彫塑館として一般公開されている。建物は2001年に国の登録有形
文化財に、中庭と屋上庭園は2008年に国の名勝に指定されている。2009年からは耐震
補強を兼ねて、大規模な修復工事が続けられていたが、昨年、リニューアルオープンを
向かえた。
朝倉氏は「東洋のロダン」と呼ばれた、日本の彫塑界をリードする中心的な存在であり、
その作品は一級品であるが、朝倉氏自ら1928年から7年の歳月をかけ設計したその建物も、
一般の建築家ではやらないような、とても独創的な建築となっている。
まず、この建物、日本ではごく初期の鉄筋コンクリート造(RC造)の戸建て住宅である。
住宅地にあって、黒く塗られた荒々しいコンクリートの外観はひときわ異彩を放っている。
また、アトリエ上部にある屋上庭園も、ル・コルビジェが「近代建築の5原則」の中で屋上
庭園を発表した時期と同じ頃に設計されていることを考えると、とても先進的な発想で
設計されていることがうかがえる。
アトリエ内も工夫が凝らされている。通常、大きな彫刻を制作する場合は作品の周りに
足場を組んで、高所での作業が必要になるが、このアトリエには約7m地下を掘り下げ、
そこに電動モーターによる昇降装置が設置されている。これにより作品を上下させることで、
常に地上レベルで安定した作業ができるようになっている。また、アトリエ内に自然な
光を取り入れるため、北向きにトップライトを設け、部屋のコーナーをすべてアールに
することで、アトリエ全体に均一な光を巡らすことを可能にしている。
また、今回の修復工事で、謎の地下室の存在も明らかになった。これは、「見る方向で
違う形の変化を研究したい」という氏の考えから、下から見上げる像の姿を研究するため
掘られことが、氏の随筆から明らかとなった。彫刻のためには徹底してアトリエを作り込む
姿勢がここでもうかがえる。
他にも、内装では竹の腰板や、コンクリートの擬木によるベランダの手摺りなど、珍しい
意匠が随所に見られ、古さを感じさせない独創的な魅力が満載の建物となっている。
(堀内研自)
→ホームページに写真を掲載しています。
http://www.spacia.co.jp/Mati/sisatu/2014/asakura_taito/
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◆読者の声◆ −みなさんからいただいた感想や意見を紹介−
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(みなさんからのご意見・ご感想をお待ちします)
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◆スペーシアのこの頃◆ −所内の話題をちょっと紹介−
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・メールマガジン355号でも紹介しましたが、2015年度採用に向けて研究員1名を募集します。
5月から6月にかけて課題(小論文)の提出、面接を予定しております。
やる気のある学生さんの問合せをお待ちしております。
http://www.spacia.co.jp/rec.html
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◎ホームページでは一方的な情報提供に終わってしまいますが、このメールマガジン
を活用し、様々な意見交換等を行うことによって、より深いネットワークが形成できれ
ばと考えています。 様々なご意見や情報もお寄せ下さい。このメールマガジンに掲
載させていただきます。(このメールへの返信でお願いします)
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(株)都市研究所スペーシア 編集:浅野 健
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