足助町の「中馬のおひなさん」というイベントは1999年からはじまっており、今年は7回目の開催になる。これまで開催中に近くを通ったりすることはあっても、1度も行った事がなかったのだが、今回初めて見学する機会に恵まれた。
見学した感想は、「とても面白い」。何が面白いかと言うと、とにかくそこらじゅうにお雛様が飾ってあることである。「観光」などには縁のない、お雛様を飾っても何の得にもなりそうにないところに、無理矢理飾ってあるという印象である。当日急にカメラが故障して残念ながら写真が1枚もないのであるが、例えば、何かの工場のようなところで、従業員がせわしなく働いている一角の物置のような場所とか、小さな肉屋の、肉が陳列してあるショーケースを通り過ぎた奥のところとか、歯医者のショーウィンドウとか、自転車屋の、多分いつもは自転車が展示してあると思われるスペースとか、スーパーの野菜が並ぶ陳列棚の上とか、美容院の入り口から入ったところとか、とても飾る場所とは思えないところを無理矢理空けて、お雛様が鎮座しているのである。そういう生活感溢れる展示場所なので、展示している人々もおそらく通常通りの生活を営んでおり、肉を売ったり、いつもと同じように働いている様子であった。
「中馬のおひなさんマップ」によると、2005年の一般の商店などの展示会場は128箇所で、各自が持っているお雛様の展示をお願いしているということだ。これ以外に公民館、中馬館といった核となる公共的な展示場所もある。主催は「AT21倶楽部」という住民団体で、お雛さん以外にも観光イベントなどを企画している。お雛さんの第1回に参加した一般商店は10店舗ほどだということだが、年々展示してくれるところが増えたそうである。展示されているお雛様も、衣装雛(現代一般的に目にするもの)が高価で手に入らなかった時代につくられた土びなや、江戸時代の内裏雛など珍しいものが多く面白い。今年は、2月11日から3月6日までの期間開催された。
「観光客向け」の、つくりものの安っぽいイベントには辟易するが、こういうイベントは奥が深くて面白い。お勧めなので、行った事のない人は一度どうぞ。
参考資料
井口貢編著『観光文化の振興と地域社会』
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