<削ろう会>
*発足 :1997年。名古屋浅草屋工務店の杉村幸次郎氏の提案と、青山鉋店青山俊一氏の後援でスタート。
*趣旨 :台鉋を使用し、できるだけ薄く、できるだけ幅広く、できるだけ長い鉋屑を出そうという会。薄く木を削るという行為で生まれた木肌の感触こそが、日本人の高度な文化を表現するものであり、営々と築かれてきた日本の技の文化を守り、会を通じて次代に伝えようとする志を持つ。
*参加者 :全国の大工、工芸家、木工家、その道具をつくる人、砥石の研究と売り手など、現在全国300名の会員。第1回35名ほどの参加が、今回4回を数えて200名の参加に膨れ上がっている。
<第4回削ろう会に参加して>
遠い豊橋にやっとの思いでたどり着いたものの、4回も続いているイベントとは思えないような地味な気配。しかし参加してみると、なんだか会場の空気は緩やかで、実はとても良い会でした。肩の力を抜いて「美しく削る、良い仕事する」ただひたすらそれだけを掘り下げている会です、なんだか羨ましい感もしました。イベントとしては、ただ削っているだけですが、若者たちの技術に対してのまっすぐな尊敬の念が心地よく、ここでは高齢者ほどかっこいい!訓練校に通っている若い男の子たち(ピアスしてるような洒落系)も真剣で、素直な面持ちで師から教えを請うている姿も非常にすがすがしいものがありました。
この日は8歳になる姪っ子を連れていったのですが、はじめて見る斧やちょうな等の道具や、また、横たわる大木の姿に目を見張っていました。公園に立っている木と、横たわる丸太と、家にある柱が一緒のものだということを、はじめて頭の中でつなぎあわせていたようです。鉋くず(削り華と呼ぶのだそうです)の木の香りを喜んで嗅いでいます。彼女もいつもお出かけにはゲームボーイを持っていく、今時(いまどき)の小学生ですが、ついに、その日は取り出しはしませんでした。ゲームボーイを取り上げるのじゃなくて、それよりも興味深い体験の機会が数多くあればいいのだと思ったりしました。技術を持った老人と若者、そしてゲームボーイをリュックに忍ばせている子供たち…何かキーワードの様に感じます。最近仕事で地域の複合福祉施設を見る機会が多いのですが、老人施設や児童施設が同じ建物内にあっても、交わっているイメージがない。あのバラバラな部屋と部屋の接点は、この「削ろう会」の様な場の中にあるかもしれません。知恵と技を持つ人が集まるところ、若さと可能性を持つ人が集まるところ、そういう人と人との交流の場を複合施設と呼びたいと切に思います。 |