先回(メールマガジン315号)述べたように欧州のドイツには、土地利用計画(Fプラン;Flachennutzungsplan)があり、この計画と市民(国民)権の主張により調和した街並みと美しい田園風景が保持されています。
ドイツでは、連邦国土整備法により国土全体の中で都市計画と農村計画の方針を示し、各市町村が建設法典(Baugesetzbuch)を根拠法として土地利用計画(Fプラン)を定め、建設許容地域と建設抑制地域に分けています。この建設許容地域の中に地区詳細計画(Bプラン;Bebauungsplan)があり、既成市街地と併せて建設可能な地域としています。その他は建設抑制地域として建設は不可能です。
一方日本では明確な国土計画はなく、都市計画法により指定されているに過ぎません。具体的には都市計画区域の線引き都市計画区域の市街化調整区域は建設が抑制されますが、その他の区域は基本的に建設が可能です。
ドイツと日本の国土計画と都市計画の比較を、下記の図に示します。(網掛け部分が建設可能地域)
【ドイツ;土地利用計画(Fプラン)】 【日本;都市計画法】
更に主に異なっている建築行政について比較してみると、建設行為に関しては、ドイツは許可制で日本は確認制となっており、筆者は日本の確認制度自体が法律上実効力の無い制度と考えているので、日本では建造物が自由奔放に建てられていると考えます。この証明に、欧州の建築家が「自国では自由にデザインできないので、日本に来て自由にデザインした建造物を建てる」と言わしめています。相隣関係は、ドイツでは許可申請時には隣地土地所有者の同意が必要であり、建設する建造物概要が事前に公開公表されています。容量規制に関して、ドイツでは容積率の他に建築容積指数という立体容量規制(m3数)があり、この建築容積指数と階数規制とで周囲と不調和な建築を規制しています。用途地域は両国共にある制度ですが、ドイツでは許可する建造物を規制し、日本では禁止する建造物を規制しており、建設許可用途範囲がドイツでは限られています。
土地利用に関して、ドイツでは土地利用計画が自治体に義務付けられており、調和した国土計画と街並みが実現されています。一方日本で土地利用計画というと都市計画法の用途地域規制しかないので、禁止されない建造物が自由に建設され、調和に欠ける街並みになっていると考えます。また住民参加も、ドイツでは計画策定時に実施されるので計画に反映され、なお且つ主導権と責任は行政が負いますが、日本の住民参加は形式化しており、中味の薄い(行政の責任回避)ような気がします。今後はこのような欧州の制度を見習い、議論して採り入れていくことが重要であると考えています。
以上を整理しまとめた表を、下記に明示します。
項目 |
ドイツ |
日本 |
根拠法 |
建設法典(Baugesetzbuch)、建築許可(Baugenehmigung) |
建築基準法 |
建設行為 |
許可制度 |
確認制度 |
相隣関係 |
許可申請には隣地土地所有者の同意必要 |
なし(1敷地単位で考える) |
容量規制 |
階数、建蔽率、容積率、建築容積指数(?数) |
建蔽率、容積率 |
用途地域 |
許可する建物 |
禁止する建物 |
土地利用 |
土地利用を指定する図面作成が自治体に義務付け |
都市計画法の用途地域規制のみ |
住民参加 |
計画策定時に住民参加あるが主導権と施行責任は行政 |
住民参加が形式化形骸化している |
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