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徒然随筆「建築計画におけるバリアフリー(ユニバーサルデザイン)と問題点」

 バリアフリーとは、建築物等の物理的障壁をなくすることを意味し、ユニバーサルデザインとは、すべての人が利用可能で有用な製品・建物・空間・環境などをデザインすることをいいます。元々は製品や建築物等に対応する考えなので次第に建築計画でも考慮され、平成19年に「バリアフリー新法」が施行されてから施設整備・改修等は進んできており、改善されています。というのは、この法律の中で「特定建築物等の基準適合義務」があり、中規模以上の建築物に適用されているからです。更に都道府県レベルでも福祉の条例が個々に整備され、法律とほぼ同様の基準が規定されています。
 バリアフリー新法の中でバリアフリー基準に適合されるべき施設は、1)出入口、2)廊下等(通路)、3)階段、4)傾斜路(スロープ)、5)昇降機(エレベーター等)、6)便所、7)客室、8)敷地内通路、9)駐車場、10)浴室等と規定されています。個々の基準は省略しますが、幅と広さの確保、段差の解消、緩やかな寸法や勾配、必要設備(手すり等)の確保など、移動し易い基準を定めているといえます。
  法律が整備され管理者の整備義務が明確になり、都市計画上の施設、例えば公共交通機関や公共交通駅舎や停留所など多くは改善されましたが、筆者の見るところ、その地域は都市部に限定されているような気がしてなりません。また外出しやすくなり一見すると住みやすくなったような気がしますが、そのように感じられるハンディキャップ者は少ないと考えます。その原因は何かと考えると、法律の整備基準がある一定の特定建築物以上に限定したことと設計者サイドにあると考えられます。つまり新築建築物に関しては一定規模以上の建築物で無い限り適用されないので、この規模以下の建築物のほとんどが未整備で終わっているものが多く、ハンディキャップ者を拒否しているような気がします。一部の小規模建築物でもバリアフリーに配慮した設備をみる機会もありますが、管理者の意識に掛かっているといえます。一方で設計者サイドにも多くの問題があり、基準をクリアすればよいとか、デザインを優先するがために使用しにくい設備を設計し視認しがたい表示をすることもあり、使用者側に立った設計をみることが少ないことには設計者のモラルと技術レベルの低さを感じます。行政側で一定以上の法令整備をしたので、今後は設計者側が自ら学習、研鑽してよりよい建築物を世に送り出す責務があろうかと考えております。
 建築計画の中でも、バリアフリーに関して対応するときに考慮する重要な点(ハンディキャップ者に配慮することともいえる。)は都市計画と同様に、

  1. 移動できること・・・通行幅があり、段差・不陸がなく、上下移動が可能なこと
  2. 看板が見易いこと・・視認し易い色で、文字の大きさや看板高さが適当
  3. 便所があること・・・わかり易い案内看板と適当な数の便器があり、広さと幅が確保
 に絞られると考えます。今後は国民自らがこの三点に注意して建築物を観るようになり、一般市民から設計に反映できるような意見が出てくることを期待しています。

某ビルの便所;デザイン重視の開き難い入口扉形状と、視認しにくい取っ手等の例

筆者設計便所;開き易い入口扉形状と、使い易い取っ手と便所機器等の例

(2013.3.4/嘱託研究員・田中清之)