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徒然随筆「料亭建築と文化性02(千歳楼)」

 岐阜県養老町に料理旅館「千歳楼」があります。養老公園内の一角にあり緑豊かな敷地に歴史と文化ある建造物です。創業は明治13年、養老公園を岐阜県が整備した時に開業し、以降明治時代の皇族、元勲や文人墨客が訪れており、宿泊帳や扁額が残されています。
  2階に約五十畳の大広間があり、ガラス越しに見える東海平野の眺望は傑出し、庭にある大正天皇御手植えの松と樹木とが調和した景観を醸し出しています。
 宿泊施設の「桜の間」、「竹の間」、「楓の間」、「松の間」は、木材やガラスなど使用材料が貴重で、明治中期から昭和初期の建築様式と意匠を表しており文化財的価値が高いです。特に「袖の間」は、明治後期から昭和初期における京都画壇の重鎮であった竹内栖鳳が設計した内装で、室内には竹内自ら描画した絹本や書幅、自らデザインした欄間など、話題性と付加価値のある部屋です。
 浴室、洗面所及び便所なども、明治中期から昭和初期の意匠を具現しており、使用されている大理石などは色彩・石目が優美で、現在入手不能な材料です。
 平成22年5月より、千歳楼に潜在する価値発掘と広報活動を重ねて営業成績を上げていく「千歳楼プロジェクト」を発足させました。先決問題として顧客確保のため、ホームページの更新と、新規のブログ投稿等によるインターネット上の広報活動をし、インターネット予約を行える様にしました。そのためには広報・宣伝と同時に、時宜に応じた値段設定が必要と考え、昼食と夕食の値段を改定し、期間限定商品(食事)を開発し、インターネット上に告知しました。
 宿泊については、文化財的空間と周囲の自然環境において非日常を体験していただけることをアピールし、値段設定も改善しました。少し苦労しているのは便所と浴室で、男女を明確に分けるなど、少し工夫しております。
 一方で新規顧客を獲得するために定期的なイベント活動を開始しました。2階大広間を定期的なイベント会場とし、食事とイベントを組み合わせて集客するような企画を実施しています。企画実施のため「千歳楼倶楽部」を立ち上げ、今まで下記のようなイベントを行いました。

(1)邦楽(琴や三味線)や胡弓など伝統的楽器の演奏会
(2)クラシック、ジャズなどのコンサート
(3)伝統芸能の舞と唄

  今後も今まで以上の企画を実施するために、地元企業とのコラボで、新酒発表会と料理を堪能する会、おいしく肉料理をいただく会、地産地消の野菜(芋、山菜など)や果物(みかん、イチゴなど)を利用した料理会などを考えております。










関連ページ 千歳楼ホームページ
http://www.senzairou.com/

(2012.9.7/嘱託研究員・田中清之)