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東京2020大会との共存にむけて

 最近、商品パッケージや飲食店、テレビ番組において、「55周年」の文字をよく見る。語呂の良さから広報として使いやすく、看板や表示が目に付くのだろう。例えば、(株)ダスキン、寿がきや食品(株)、(株)ラケル、(株)タツノコプロなどの企業の設立や、日本ケロッグ合同会社等による日本でのシリアル食品発売、メ〜テレ、大河ドラマ、連続テレビアニメの放送などが55周年を迎えている。
 55年前といえば昭和38年(1963)、東京オリンピックを翌年に控えた年である。当時の日本は高度経済成長の最中であり、オリンピックに向けて新幹線や首都高速道などのインフラや、国立競技場や日本武道館などの施設が整備された。また、オリンピック観戦のためにテレビの普及率が高まってきた時期であった。こうしたオリンピック景気の中で多くの企業・事業が生まれ、そのうちより優良で、市民により親しまれたものが現在まで続いているのだろう。
 前東京オリンピックの翌年には、大阪万博(昭和45年(1970))の開催が決定した。現在、2年後に東京オリンピックを控え、並行して大阪では2025年の万博招致の取り組みが行われている。55年前と似た状況であるが、はたして、モノもサービスも有り余る現在の日本で、以降50年続く企業・事業は生まれるだろうか。むしろ今、オリンピックを契機に何かを生む必要はあるだろうか。
 インターネットやSNSの普及により、55年前より確実に世界は狭く身近なものになっている。前大会より大勢の外国人が来るだろうし、SNSではネガティブな意見が目に付くようになるだろう。私は、平成のモノに満たされ、興味を選択できる時代しか知らないので、全員が一つの娯楽を楽しんだり、世界的祭典に対して全国民の意識が一つになったりする場面に出会ったことがない。世界が狭いからこそ、今やオリンピックや万博は特別なものではない。
今求められるのは、日常を揺るがす革命的な祭典ではなく、日常と共存できる適切な祭典なのだと思う。
 東京オリンピック開催に伴う諸課題のうち、交通面に関しては、「東京2020大会の交通マネジメントに関する提言(中間まとめ)」にて、大規模整備ではなく、交通マネジメントによって対策を行う方針が示され、具体的に課題と対応策があげられている。これに対して一部否定的な意見もあるが、開催時に交通量が増えることは確実であり、利用時間の分散や休暇取得により課題を解消できるのであれば、一般市民も努力が必要である。
 一方、マスコットキャラクター公募に対して「ロイヤリティなしのデザイン料が安すぎる」、ボランティア募集に対して「参加者の負担が大きい」といった批判がある。これらの批判の矛先となっているのは “オリンピックに関与できる名誉”や“他では味わえない感動”に価値を見出すことを強いていることにある。一般市民の負担ばかりが目立つため、より不満が出るのだろう。参加者への負担軽減や名誉以外のメリットの提供など、運営側の努力が必要である。
 今、オリンピックは万人の娯楽ではなく、運営側の都合全てを押し付けることはできない。とはいえ一般市民一人ひとりの都合に合わせることもできない。日常との共存、オリンピックとの共存のため、運営側と一般市民が互いに努力し、互いを尊重し合うことが必要だと思う。どうか無事に開催してほしい。

(2018.7.18/日高史帆)