登録有形文化財の所有者等を会員とする愛知県国登録有形文化財建造物所有者の会(略称:愛知登文会)が実施する文化庁事業のお手伝いをさせていただいている。その中で様々な所有者の方とお会いし、建物に対する愛着や思いとともに様々な悩みを抱えておられることを知った。
空き家にせざるを得なくなった建物を保存するため、通風・換気等を定期的に行われたり、市民団体に使ってもらうことで建物の維持を図ったり、建物を改修して多目的スペースとして使ってもらえるようにしたりと、登録有形文化財に登録されたことに誇りをもち、建物に愛着をもっておられることが伝わってくる。
しかし、建物の維持管理は大変である。老朽化も進行している。登録文化財への優遇措置として、保存・活用するために必要な修理の設計監理費の1/2補助があるが、工事そのものに対する補助はない。建物の固定資産税の1/2減免があるが、土地の固定資産税の減免はない。市町村によっては、独自の改修補助制度や土地の固定資産税についても指定文化財に準じて減免しているところもあるがわずかに留まっている。保存・活用をすすめるために制度の拡充が望まれる。
さらに切実な悩みとして感じたのが世代間継承の問題である。愛知登文会で9月に2件の登録文化財の現地視察をさせていただいたが、1件には後継者がなく、もう1件は後継者がすでに遠方に自宅を有し、引き継いでくれるあてがないという。最初、視察対象にさせてほしいとお願いした際には、どちらの所有者からも遠慮したいというような言葉もあったのだが、視察の場では参加者へのもてなしとともに建物に対する思いや悩みも語っていただき、よい機会を設定してもらったと感謝いただいた。所有者には残したいという思いがあるのにこのままでは建物がなくなってしまうかもしれない。地域と連携する中で建物を残す手だてを考えていくことが重要だろうと感じている。
愛知登文会では、今年初めての取り組みとして、愛知県内37カ所の登録有形文化財において、普段公開されていない建物の公開や専門家・所有者による建物解説を行う「愛知登文会 国登録有形文化財 特別公開」が開催される予定である。地域の方々に登録有形文化財の魅力を知ってもらう機会となり、地域との連携の中で保存・活用が進んでいくことを期待したい。
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