自分の卒業した研究室の恩師である齊木崇人先生が、4月から神戸芸術工科大学(以下、芸工大)の学長に就任することになった。卒業生でお祝いのパーティーを企画したのが、先生が強硬に反対されたため、記念講演会という形でやっと開催することができた。講演会では芸工大での19年に渡る研究成果を、集まった卒業生の顔を見ながらなつかしそうに語っていただいた。
近年の大きな成果としては、「ガーデンシティ舞多聞(まいたもん)」のプロジェクトがあげられる。これは、神戸市垂水区の住宅地開発プロジェクトであるが、先生が長年研究を続けてきた、世界各国の伝統的な集落研究やイギリスの田園都市の研究をベースに現代の「新・田園都市」を創出するプロジェクトとして、第一期の「みついけプロジェクト」約60戸が完成した。敷地はUR都市機構が所有する旧舞子ゴルフ場跡地で、芸工大のすぐ南に位置する。計画地全体の面積は約108ha、計画総戸数は約2,600戸という大規模な住宅地開発である。土地は50年の定期借地権が設定され、低廉な土地代で緑豊かな広い敷地を確保できることが人気を呼び、第一期の「みついけプロジェクト」の募集では約1600件の応募があったそうだ。「みついけプロジェクト」では平均215坪という余裕ある敷地が用意されているが、それらは通常の造成地のように碁盤の目に整形されてはいない。地形に合わせた曲線で道路が構成され、それをもとに宅地が割られる。地形もできるだけいじらず造成されているため、1つ1つの宅地は変形で傾斜のある土地となっている。さらに、道路は都市計画で6mの幅員と決められていたため、入居者は民地で2mの歩道を確保するという条件で契約している。このあたりは、計画当初から入居者が集まりミーティングを重ねることで、住民自らができるだけ屋外空間への積極的な管理を行うことでこそ、すぐれた生活環境が創出されるという基本理念の理解があってこそ実現できた計画であろう。
こうした取り組みに対し、「ガーデンシティ舞多聞」は2007年のグッドデザイン賞も受賞しており、今後、どのようなコミュニティや景観が形成されるかが楽しみなプロジェクトである。 |