このメールマガジンでも何回か取り上げているが、やっと自宅(尾張旭の家)が完成した。(この時点では完成していないが)
この家は尾張旭市の名鉄瀬戸線三郷駅の東、小高い丘の上にある。敷地は北向きの傾斜地という悪条件にあり、普通に建てると1階部分は擁壁で固め、2階レベルを地盤面とし、そこから上に家を建てる方法を取ることになる。この家では1階にエントランスを設け、吹き抜けにより上階と繋げることにより、地階のような薄暗いエントランスから中二階を抜け、さらに隣の屋根をかすめ、空を望むことができる開放的な空間を形成した。また近年、家の顔とも呼べる玄関の表情が防犯対策のため、ますます閉鎖的になっているように思うがこの家では、外に対して開放的に造ると同時に防犯性能も低下させない工夫をしている。
間取りは3LDKや4LDKといったnLDKタイプとはなっていない。設計をしていて、すぐに住み方が想像できてしまうそういったプランに興味が湧かなかったからだ。もっと、いろいろな住み方を考え、新しい生活を生み出せる家を造ろうと考えた。いろいろな住み方に対応できるようなフレキシビリティを得るには、大きなワンルームという考え方があるが、これは妻に大反対された。そればかりか、妻の要求は独立キッチンとたくさんの小部屋だった。こうした条件をクリアーするため、日本の続き間のように建具により、部屋がつながったり分かれたりする方法を採用した。開けばリビング、閉めれば個室というように、1つの部屋に2つ以上の機能を想定し計画することで、それらの組み合わせがさまざまな間取りを生み出す仕組みである。結果、最大7つの部屋に区切れたり、すべてひとつのワンルームになったりする家が生まれた。
外観はシンプルな箱形で、材料もありふれたものしか使用していないが、自然との相性がよい物を選んでいる。自然との相性とは、ほどよく風化し緑となじむということである。近年よく見かけるレンガやタイル風の窯業系サイディングボードは、耐久性や施工性こそ優れているが、この点であまり魅力がない。自然との相性がよい材料を使うことで、家に緑を飾る楽しみが生まれ、まちの景観形成によい影響を与えるのではと思っている。この家は室内も外観も、家を飾る楽しみが生まれる仕掛けをいろいろと施した。
最後にこの家には、オフィスやギャラリーといった住宅以外の機能も想定して計画している。これにより1戸の住宅が社会との接点を持ち、地域との交流が広がる可能性に期待している。それを試す意味も含め、オープンハウスでは、豊橋出身の若手アーティスト、鈴木淳夫氏の小展覧会をウェストベスギャラリーコズカにご協力をお願いし開催することとなった。氏の作品は、塗り重ねた絵の具の上から彫刻刀で無数のドットを刻むという独自の手法で製作され、現代的なシンプルな空間にとてもマッチする絵画である。
興味ある方は、下記の日程でオープンハウスを予定しているので、一見されたい。
尾張旭の家 オープンハウス 7月29日(土)12:00〜19:00 7月30日(日)12:00〜17:00
*都合により変更する場合がございますのでご了承下さい。
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