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まちづくりと中心市街地活性化
 最近はまちづくり三法(都市計画法、中心市街地活性化法、大店立地法)の改正に伴って、様々なところでシンポジウムが開催されたり、雑誌で特集されたりと喧しい。中心市街地が衰退し、郊外に市街地が低密度で拡散していくままに放置していくことは、今後、都市が確実に人口減少を迎えるであろうし、まちづくりを担う行政も交付税がカットされ、税収も伸び悩む中で、行政サービスの水準を維持するのが難しくなっていくことは明らかであろう。

 そのため、中心市街地を活性化し、コンパクトな市街地を形成しようと様々な施策が打ち出されてきた。しかし、中心市街地=中核的な商店街として位置づけ、商業者を中心とした組織で動かそうとしてきたがうまくいかず、郊外地主のニーズと都市計画規制の緩さとあいまって、郊外での大型店立地や住宅供給に歯止めが利かなかった。

 この反省にたってのまちづくり三法の改正であるが、特に中心市街地活性化にあたっては、商業者だけでなく、地権者を巻き込んで街を改善していかなければ、立ち行かない状況に陥っている。郊外大規模SCは、売り上げの悪い店舗を入れ替えて、いつも鮮度を保とうと1社によってオペレーションされる。聞くところによると3年で30%を入れ替えるのが理想のようだ。10年継続して営業する店は1割程度という計算になる。それに対して商店街は、業態を変える店も有ろうが、基本的に同じ店が営業を続けることになる。賞味期限を過ぎた店舗ばかりになるのでは、消費者は寄ってこない。そこで、商業者としてではなく、土地持・店舗持の地権者として行動をとるよう促して、魅力ある新規個店の導入を図るとともに、消費したくなる「まち」として中心市街地をマネジメントしていくことがこれからのテーマとなる。

 (株)まちづくり長野(第三セクター)はそのような目的で設立された組織である。取り組み事例として年間600万人が訪れる善光寺の門前町にある「ぱてぃお大門(だいもん)」がある。もともと蔵屋敷群であったところであるが、老朽化著しい蔵群の土地を借地し、建物は寄付して貰い、蔵の改修工事のための投資とテナントのリーシングを行って、完成させたものである。トータルとして目標値を上回る売り上げを示しているが、個別に見ればマチマチであるとのこと。いずれの時期に店舗の見直しが行われるのであろう。ここでも(株)まちづくり長野によるマネジメントが行われている。

 一般的には3セクは行政の悪いところと民間の悪いところを併せ持つので、うまくいかないと言われるが、この組織は着実に成果をあげてきている。イベント組織でなく、店舗運営(とまと食品館)やディベロッパー業務(ぱてぃお大門)まで関わっている。そこにはタウンマネージャー(以下TM。服部年明氏)の存在が大きい。服部氏は信州ジャスコ常務を経て、TMに就任している。いわば商業開発のプロである。まちを変えていくには、このようなプロが不可欠である。そしてそれを支える商工会議所や市の存在も大きい。

 以上を勘案すると、中心市街地の活性化はまちづくりであり、個別店舗の対応では限界があるので、まさにエリア(地域)のマネジメントが不可欠である。マネジメントにあたり、計画づくりやイベント実施に終始していてもまちは変わらない。やる気のない商業者等を地権者として定義し直し、マネジメント組織はディベロッパー業務まで関わることでまちを変えていくことができる。しかし、そこにはリスクが伴うので、その分野のプロが本腰を入れて取り組み、かつ関係者の支援があることが前提となる。

 様々な雑誌や本で改正まちづくり三法が取り扱われているが、下記の文献が参考になる。(1)はこれまで商業論とまちづくり論は別々に研究されてきたが、それを融合した文献、(2)は今回のまちづくり三法の改正の理論的根拠になったと言われる文献、(3)は日本が米国の後を10年遅れで追走していると言われているが、米国の大型店問題と最新の動きを示した文献である。
(2006.10.30/井澤知旦)