現在の位置:TOP>まちのトピックス>すまいまちづくりコラム>マネキンのまなざし WWW を検索 スペーシアサイト を検索

 
 
マネキンのまなざし

 名古屋都心、とくに百貨店やブランドショップが並ぶ南大津通を歩くとファッション系、ブティック系のショーウィンドウが多くある。そこではマネキンをよく見かける。マネキンも街の構成要素になっている。

 マネキンには用途によって様々あるようだ。フルマネキン(全身)は比較的少なく、町中で見かけるのは胴体だけのハーフマネキンが中心で、そのバリエーションとして手足が付いている。顔を付けるとイメージが固定化されるので、それを避けているのであろう。上半身用、下半身用とわけて作られたマネキン。ネックレスや宝石、カツラのための首や手、頭の部分を表現しているマネキンなどである。
これらのマネキンを見て気づくことがある。

 第一に婦人と紳士の年齢層(ヤング−アダルト)と子供が一般的であって、高齢者用や中年太り用のマネキンをまだお目にかからない(既にあるかも知れないが)。最近ようやく妊婦のマネキンをベネトンで見かけた(写真を撮ろうと思っているうちに、夏から秋冬に模様替えされて今はない)。高齢者用や中年太り用のマネキンは、どの年齢層の男女であれ、いつも若返りたい、痩せたいと思っている人々の気持ちを逆撫でするからなのであろう。しかし、これからの高齢社会では、どのようなマネキンがショーウィンドウを飾るのか楽しみではある。

 第二に依然外人顔なのである。シャンプーや化粧品の宣伝では外人主流からアジアンビューティやTUBAKIに代表されるように、日本人主流になっている。ファッション雑誌でも蛯原友里や押切もえ、鈴木えみが幅を利かせているのだが、マネキンは外人主流である。あこがれのセレブファッション、あこがれのスタイルは依然欧米系の外人なのであろうか。日本人女性顔のマネキンを松坂屋南館1階で唯一みかけた。(店舗内の写真は禁じられているので、お見せできないのが残念。端正な顔立ちではなかった)日本人顔マネキンは少ない。

 第三はフルマネキンには瞳が描かれているものが多いが、その視線はどこに焦点があたっているのか?一度、視線を合わせやすい、しゃがんでいるポーズのマネキンの瞳をじっと見つめたが、焦点が無限大にあるためか、こちらの視線と合わないのである。つまり、両目の視線が平行線であり、クロスしない。何処を見ているのかわからない焦点ボケのマネキンが並ぶ通りは夜歩くとサイコスリラーの世界である。そのマネキンに視線を合わせようとしている私の行動は、生身の人間であるだけに人から見ればもっと怖い存在かもしれない。

 名古屋市内の某路上に置かれた、上半身が手で下半身がマネキンというユニークなキメラマネキンの看板があった。この店においでと「手マネキ」ンしているシャレなのだろうか?スカートも履き、下着も付けて(ペンキでなくホンモノです。)いる。モラルはあるようだ。
 ここでは人々と街(景観や情報)を媒介する「マネキン」を例に取りあげた。マネキンだけでなく、看板も建築物のファサードもそうであるが、街のイメージは往々にしてこれらで決まってくる。そのような観点からマネキンを見るのは楽しいものだ。

 ところで、マネキンとは何か?語源由来辞典(http://gogen-allguide.com/ma/mannequin.html)を調べてみると次のように説明している。「マネキンとは、衣料品店などで衣服を着せて展示・陳列する等身大の人形。マネキン人形。商品を使い宣伝・販売を促進する女性。マヌカン。」バブルの時代に流行ったハウスマヌカンと同じだ。マヌカンが本来の意味だが、いまではマネキン人形のことを指している。フランス語読みも英語読みも「mannequin」をマヌカンと発音するが、日本で商品展示人形に「招かん(まぬかん)」という名では商売あがったりなので、「マネキン」と呼んでいるようである。そのほかいろんな情報が掲載されているので、ご参照のほどを。


ベネトンのマネキン 

矢場町から松坂屋への地下通路にあるマネキン
(焦点が合いません) 



キメラマネキン
(2006.9.4/井澤知旦)