官能都市という言葉をご存じだろうか。2015年、HOME’S総研が独自の視点で都市を評価した際に提案した都市像である。官能というと性的な意味に受け取られるかもしれないが、ここでは人間の五感で体験するという意味なのである。五感による体験が豊かにできる都市を官能都市と名付けているのだ。そして、官能都市という視点から、インターネットアンケート調査を行い、全国の都市ランキングを発表している。
調査をみると、アンケートの選択肢が非常に独創的だ。従来の人口や施設数など統計データによる評価ではなく、動詞による評価をしている。つまり、そこに暮らす人々がどのようなアクティビティをその都市でしているのかに着目した選択肢を準備したのだ。例えば、「買い物途中で店の人や他の客と会話を楽しんだ」「路上でキスをした」「刺激的で面白い人達が集まるイベント、パーティに参加した」「地元でとれる食材を使った料理を食べた」「公園や路上で演奏やパフォーマンスをしている人を見た」「通りで遊ぶ子供たちの声を聞いた」など計32あり、いずれも統計では数値化できないが、確かにそういった経験ができるような都市なら暮らしてみたいと思えるような「動詞」が選択肢に並んでいる。
調査対象都市は、全国の県庁所在都市と東京・横浜・大阪の市区の134市区部となっている(愛知は名古屋市として一括りでの評価)。結果は、HOME’S総研のホームページに上位50位までが公表されており、東京や大阪の市区が上位に多い中、中部はというと、8位金沢市、12位静岡市、35位長野市、38位新潟市が50位圏内にあるものの、名古屋市は残念ながら上位圏外となっている。詳しい結果についてはホームページをご覧いただきたい
(http://www.homes.co.jp/souken/report/201509/chart/)。
都市の評価に関しては、官能都市評価のように人々が暮らしの中でどれだけのアクティビティを積み重ねているかが重要だという認識は広く受け入れられていると思う。しかし、その定性的な視点から都市という単位で定量的に評価し、ランキングするのは初めての試みではないだろうか。非常に面白い視点だと思ったので、紹介させていただいた。2016年11月には「本当に住んで幸せな街〜全国『官能都市』ランキング〜」(光文社)という書籍も出版されている。関心ある方は一度、読んでみてはどうだろうか。
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