県内観光施設等のバリアフリー情報をまとめ、ホームページを立ち上げて発信して行くことに今年度取り組み、車いすユーザー等の障害当事者と計測者が県内の観光施設に出向いて調査した中から、歴史的な街並み(犬山城下町)と農業公園(東谷山フルーツパーク)の2事例を昨年、このメールマガジンで紹介した。今回はその続きで、観光施設と商店街の事例を紹介する。
観光施設の例−有松・鳴海絞会館
伝統工芸の有松絞と旧東海道の街並みで知られる有松地区(名古屋市緑区)の拠点施設である。1階は主に有松・鳴海絞の売店、2階は資料展示室と有松・鳴海絞りの実演が行われる。有松絞を学ぶためには2階にあがらなければならないが、エレベーターが設置されていない。そのため、調査した日には、電動車いすユーザーもいたが、同行したスタッフが協力して車いすごと持ち上げて対応した。
周辺に目を向けると、最寄りの名鉄有松駅にエレベーターが設置され、会館が立地する旧東海道も街路事業により無電中化と舗装整備が行われ、交通規制の面で一方通行となったこともあり、車いすユーザーでも随分回遊しやすくなるなど歩行環境が整い、以前よりも平日の昼間の来訪客が多くなっているように感じた。こうしたことから、拠点施設の絞会館についても早期のバリアフリー化が望まれる。
商店街の例−円頓寺商店街
名古屋市内有数の商店街の一つ。高層化が進む名古屋駅から1km程度の位置にありながら、昔ながらのアーケードが東西に連なり、“昭和”の雰囲気漂う場所である。店のつくりも昔ながらの様相であるため、通路が狭いとか棚が高いといった店もあるが、通りから店内へは段差なく入れる店も多く、介助者など同行する人がいれば買物を楽しめる。商店街や周辺の地形は平坦であり、何よりアーケードはどの天候でも安心して通行できるため、
歩行者にとってはありがたい。
最近この界隈に増えている来訪者の立場を考えると、トイレの確保が課題である。今は1箇所だけ、商店街に立地する高齢者介護施設が最近食堂を開設し、その中に障害者対応トイレが設置され、一般の来訪者の利用も認めている。今後、既存の障害者対応トイレの活用(例えば学区のコミュニティセンター内にあり)や新設によって増えていくと、来訪者も安心して回遊できるようになる。さらに、既存のマップに「トイレの情報」も付加されるとなおよい。
施設に出かけたいというニーズは、加齢によって身体機能が低下した高齢者の方や障害者の方などに限定されているのではなく、介助が必要な人と一緒に旅行に出かけたい家族の方なども考えられる。今後高齢化のさらなる進展により、こうしたニーズがますます高まると予想される。観光施設等のバリアフリー情報を発信していくことで、他の施設との差別化を図ることができると考えられる。
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