現在の位置:TOP>まちのトピックス>すまいまちづくりコラム>自転車と道路空間の再配分 WWW を検索 スペーシアサイト を検索

 

自転車と道路空間の再配分

《自転車ブーム》
  自転車は健康ブームや環境ブームで注目を浴びています。しかし、一方で自転車事故(*1) も発生し、ここ10年では平成16年をピーク(18.7万件)に減少傾向にあり、平成21年には 15.6万件となっています。相手当事者は対自動車が84%、事故原因は出会い頭が54%、 件数増加傾向にある事故種は対人事故でした。この状況は、いわゆるママチャリ(*2) が歩道上を、交通ルールを守らず、わがもの顔で走行するために引き起こされています。 自転車が歩道を走る国は先進国のなかでは日本ぐらいで、事故件数の多さも世界有数です。

《自転車走行の実態》
 2009/8/19号のメールマガジンで書きましたが、私自身は晴れている日は野並から 勤務地の矢場町まで片道40分の《自転車ツーキニスト》になっています。ロードバイクに またがり、ヘルメットをかぶって車道(外側帯)をそれなりのスピードで走り、信号が赤なら 必ず止まっています。これでやっと自動車と同じ車道を走る仲間と認識してくれます。 しかし、多くのママチャリは歩道を走り、信号が赤でも自動車が走っていないと判断すると 横断走行していく自転車は少なくありません。
 夜間走行は気を使います。目立つ色の服を着て、点滅するテールランプを光らせ、 リュック型カバンと裾バンドに夜店で売っているピカピカライトを取り付け、これでもかと その存在をアピールしながら走っています。しかし、軽快車(ママチャリよりも)で黒い服を 着て、無灯火で走られると、その存在が見えず、双方ともスピードを出しているため、 ぶつかりそうになったことが時々あります。自動車との接触事故は起こるべくして起こる 気がします。 歩く距離を自転車で走るなら、むしろエネルギーを使わないので、健康に貢献しません。
 自動車の代替として自転車が使われないとCO2の削減に貢献しません。歩道を走ると 対人事故が増え、対自動車事故も増えます。高齢者の自転車乗りが増えてくると対自動車 事故は確実に増えていくことでしょう。

《道路空間の再配分》
 道路の空間再配分を考える時代になりました。自転車をきちっと位置付けることです。 車道と同じレベルで自転車道を整備すべきで、歩道を走っていては事故がなくなりません。 といっても国道19号の自転車レーンは歩道と同じレベルで車道をつぶして拡幅していますが、 ほとんど自転車が走っていません。ママチャリは歩道を走っています。車道を横断する時は 自転車横断帯へ誘導され、バス停があれば一旦歩道に出、狭い幅で双方向通行となって いるので、このうえなく走りづらい(*4)。自転車に乗ることが少ない人(ましてロードバイクに は乗ったことのない人)が設計した道路です。日本でもっとも有名な自転車レーンになって しまいました。「これぞ最悪自転車レーンの見本」(*5)と呼ばれています。
 自転車王国デンマークのエレマン環境相は、COP10に出席するため来日した折、「専用 通路の整備が進んだ地域では自転車が2割増え、車が1割減った。排ガスが減るだけで なく、自転車に乗って体を動かすのは健康によく、医療費削減につながり政府予算も減る」 とコメントしています。

《道路は、だれのものか》(*6)
 優遇すべきは歩行者で、次に自転車で、最後に自動車のはずです。どうも自動車、歩行者、 自転車の順になっているような気がします。「免じて許す」自動車はそのことを肝に銘じ ましょう。ただし、自転車運転のマナーは何とかしなくてはなりません。自転車に乗りながら 携帯メールを打つ曲芸師も随分出てきました。なんとかしなくてはなりません。

*1 警察庁交通事故統計 http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001062201
*2 ママチャリとは歩道を走ることを前提に作られた、重くて重心が低くてスピードが
でない自転車のこと。日本で独自に発展し、ガラパゴス型自転車と呼んでいる。
*3 毎日JP 「銀輪の死角」2010.10.27
*4 伏見の自転車レーン
http://blog.goo.ne.jp/calcul/e/39083bd2f42d7a8dc149572bdae6c8a9
http://www.youtube.com/watch?v=seKhu_sqrUw(動画) いずれも完成直後の走行
*5 疋田智「自転車ツーキニストの作法」2010.10ソフトバンク新書 
*6 これは森川高行名大教授の本のタイトルのパクリです。
森川高行「「道路は、だれのものか」2010.9ダイヤモンド社

(2010.12.20/井澤 知旦)