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コンパクトシティへの一考察

 本日(2015.8.4)、ドイツのエアランゲン市在住のジャーナリスト高松平藏氏による「ドイツの地方都市は何故元気なのか−コンパクトシティのクオリティ」と題する講演会があった。高松氏とは2014年2月にエアランゲン市を訪問した際に都市事情をヒアリングした時から付き合いがあり、同じ関西人ということもあって、すぐ打ち解け、今日に至っている。
 この講演では10.6万人都市エアランゲン市が元祖コンパクトシティとして捉えたうえで、その在り様を考えようとするものであった。確かに中世のヨーロッパ諸都市は外敵防御のための城塞都市を基本とするので城壁内で生活が完結するよう機能(教会・役所・市が開かれる広場・文化施設・商業施設など)が集約されている。ちなみに「進撃の巨人」のモデル都市はドイツの円形城塞都市ネルトリンゲンだと言われている(漫画では巨人からの攻撃を防ぐため、城壁は実際の都市より高すぎるのだが)。
 日本でのコンパクトシティは空間的集約性が強調される。歩ける範囲に生活諸機能が集約されていて、都市(拠点)間は公共交通で串刺されてネットワークされているイメージである。交通の便や店舗の多様性、事業所(働く場所)の集積といった経済的価値の側面、歩行者ゾーンや良好な景観や緑化といった可視化できる社会的価値の側面の強調である。これらはコンパクトシティの一つの側面に過ぎない。
 もう一つ重要な側面は可視化しづらい社会的価値である。自分たちの街を自分たちで育て上げる自治力であり、それを支えるNPOの活動が代表例であろう。エアランゲン市では650のNPOが活動している。名古屋市は228万人で1000弱の団体であることを勘案すれば、エアランゲンは非常に多いことがわかる。NPOに限らず教会の役割も同様に大きく、高松氏の言葉によればNPOや教会の双方とも「信頼の網目」と呼んでいる。自治力だけでなく、都市のアイデンティティとなりうる文化力も欠けてはならない社会的価値である。アーカイブ、ミュージアム、出版はその代表例であるし、カフェテラスの設えによるコミュニケーションの活性化という公共空間の活用のあり方も社会的価値の一つであろうか。
 シビックプライドやセンス・オブ・プレースといった言葉を耳にすることがあるが、当事者意識やまちへの愛着の価値とでも呼ぶべきキーワードである。それを支えるのが自治力であり文化力なのであろう。よってコンパクトシティと言った時には、空間や経済(機能)の集約性だけでなく、自治や文化をも集約できることが重要である。

エアランゲン駅
エアランゲン駅

マルクト広場
マルクト広場



ハウプト通りのモールとカフェ
(2015.8.5/井澤知旦)