日本は今や人口減少局面に入り、ここ数年は年間20万 人程度の減少を見ているがこれから本格的な(急激な)人口減少の時代に突入する。2005年 を基準に、その50年前と50年 後の人口はいずれも9千万人だが、年齢構成が大きく異なるため(高齢化率5.3%→40.5%、生産年齢人口61.2%→51.1%)、50年後は日本の活力が今より確実に低下する。国民の給与総額も1998年 の223兆円をピークに、減少を続けている。ボリュームの大きい団塊の世代が本格的定年を迎え、ボリュームの小さい若者層が社会人なるので、給与総額の減少に拍車を掛けることになる。
だから同じやり方でビジネスをすれば、給与総額の減少割合で売上げも落ち、消費税の増税はそれに拍車をかける。売上げを伸ばそうとすると、右肩上がりの分野を対象にするか、海外の成長分野に進出するかの選択であろう。政府の戦略市場創造プランでは、健康やエネルギー、観光等がこれからの成長分野との認識である。ちなみに今の大学1年 生60人に将来働く職場として、地域内、国内、海外のどれを希望するかと尋ねると、30:25:5であった。地域志向が強いが、その地域に右肩下がりの職が希望するだけあるかが問題となる。
増田寛也等は「地方消滅−東京一極集中が招く人口急減−」というセンセーショナルなタイトルの書籍を出した(中公新書2014)。896の自治体が消滅可能性都市であるとのこと。働く場(所得格差解消や雇用の場)を求めて人口が大都市に集中するが、大都市ほど合計特殊出生率(女性が一生涯に生む子供の数)は低いので、地方の消滅と日本の人口減少は同時進行することになる。その本では、国家戦略として
@人口の維持・反転にむけた結婚・妊娠・出産・子育てへの一貫した支援、
A大都市圏への人口流入の流れを変える人口の再配置、
B一人ひとりの能力・資質向上にむけた人材の養成・獲得
を打ち出している。そのうえで、それぞれに対し、具体的な内容を検討している。
こうした政策について、批判もある。代表的には「さらなる『選択と集中』は地方都市の衰退を加速させる」(岡田知弘「世界」2014.10) や「消滅可能性都市のウソ。消えるのは、地方ではなく『地方自治体』である。」(木下斉「BLOGOS」2014.9.14http://blogos.com/article/93983/) がそれである。「地方消滅」では地方中枢拠点都市づくりが東京一極集中に歯止めをかける政策として打ち出しているが、批判はそれ以外の地方は切り捨てとなり、むしろ地方の多様な主体が結集して地域内再投資力を高めることが現実的であり、実際に地方では、税金に頼らず「地方のまちなか活性化方策」、「公共空間の賑わい空間への活用策」、「駅を中心としたまちづくり」など様々な取り組みが行われているとの指摘がある。(佐々木晶二「まちづくりイノベーションによる地方再生政策検討メモ」*)
いずれにせよ、人口減少下における日本の持続的発展をいかに達成するのかは、真剣に検討していかねばならない時期である。名古屋市や隣接する長久手市などを見ているとそのことは実感しないが、少し離れて地場産業が衰退している都市や都市中枢性が弱まっている都市、例えば多治見市などの東濃西部、県庁所在地のある津市などでは、事業所の撤退や人々の動きを見るとそれを実感する。
「地方消滅」本は、多様な批判を惹き起こし、人々の関心を高めていくことになり、この出版は時宜を得ていると言えよう。
*http://www.minto.or.jp/print/urbanstudy/pdf/research_01.pdf) |