「もえの丘」は地域福祉の活動拠点として2000年にオープンした総合福祉センターである。近年の福祉需要の多様化に伴い、非常に多くのサービスを複合させた施設となっている。その内容は地域福祉センター、地域ふれあいセンター、高齢者健康センター、在宅介護支援センター、訪問看護ステーション、社会福祉協議会の6部門にもおよぶ。
以前、私も総合福祉センターの設計に携わったことがあったが、そこでの問題点がこの施設でも顕在化している。こうした複合施設の諸室名を見ていくと、会議室、相談室、研修室、活動室等が多数あることに気付く。それらの機能はほとんどが会議機能でどの部屋を見ても椅子とテーブルが置いてあるだけなのである。つまりは複合化のメリットの一つである共用化が、縦割り構造のプログラムにより阻害されているのである。複合型公共施設の建設にあたり、まず取り組なければならないことは、各部門を解け合わせるようなプログラムの構築で、この建物を設計した高松伸氏もそれを願ったに違いない。その思いは形となって現れている。多数の諸室は2本の帯に並べられ、それらを綴るように中央で交じり合わせている。その形は生命のさまざまな情報が綴られた染色体の形のようである。見た目がかなり奇抜なので賛否両論はあるだろうが、設計者としてやれる範囲でやるだけのことはやりましたと思わせるパワーはあった。
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