2017年11月30日、「MRJミュージアム」が愛知県豊山町にオープンした。MRJ(三菱リージョナルジェット)とは、三菱重工業が中心となって開発を進める国産初のジェット旅客機であり、YS-11以来約半世紀ぶりの国産旅客機である。
三菱重工グループがMRJの開発に着手したのは2008年である。現在は米国で4機が飛行試験中、名古屋空港で1機が地上試験中であり、2018年末までにはさらに2機が完成予定である。航空機が商業運航されるためには、安全性や操作性が基準を満たしていることを証明する「型式証明」を取得する必要がある。型式証明検査は、設計段階、製造段階、完成後の各段階で行われ、国土交通省が審査し、証明書を発行する。MRJの開発においては、基準不適合にともなう設計変更等によりこれまでに5度の納期延期をしており、2020年の初号機納品をめざしている。世界の航空会社からはこれまでに407機の受注があり、YS-11の生産が182機にとどまったことからしても、現在の日本の航空機産業に大きな期待がかかっていることがわかる。
中部地区は日本の航空機産業の中心地である。中部5県(愛知、岐阜、三重、富山、石川)の航空機・部品生産額の全国シェアは50%を超える。特に愛知県には、MRJの設計・開発拠点をはじめとして、ボーイング式航空機の生産を行う重工メーカーや航空機部品メーカーなどの製造企業が集積する。また、研究面においても、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)名古屋空港飛行研究拠点をはじめ、航空宇宙工学や素材の研究を担う大学・研究機関が多数存在する。
MRJミュージアムは、名古屋空港に隣接して建つMRJの最終組み立て工場内にある。入館は完全事前予約制で入場者数を制限しており、展示フロアと工場をめぐるツアーでは丁寧な解説が受けられる。展示フロアでは、機内を体験できる実物大の機首模型や本物の部品が展示され、客室の高さが小型旅客機の中では最大に設計されていること、機体の軽量化をはかるために接合部品を削減した部材形状をしていることなどが間近に体感できる。工場見学では、機体組み立ての作業場を見下ろすように見学でき、平日は実際の作業風景が見られる。
同日にオープンした県立博物館「あいち航空ミュージアム」では、ゼロ戦やYS-11をはじめとした県内で開発された6機の航空機が展示されている。機内公開イベントなどが開催されるなど、より間近で航空機を体感することができる。MRJミュージアムとのお得なセット券が販売されているので、ぜひあわせて見学してみてほしい。
両ミュージアムの見学で航空機の歴史や新型機開発の試行錯誤を知ることで、空の旅がより一層魅力的なものになることだろう。MRJの運航を心待ちにしたい。 |