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名古屋城天守閣の木造復元を考える

 このメールマガジンの第403号でも紹介させていただいたが、今名古屋では名古屋城天守閣の木造復元が話題となっている。そして名古屋市内の全区で開催される「名古屋城天守閣の整備にかかるタウンミーティング」に、昨年末に私も参加させていただき、河村市長の熱い思いとともに、木造復元にいたる背景・目的などを確認することができた。私も市民の一人として木造復元を考えているが、肝心な私自身の名古屋城についての記憶が十年以上前に訪れて以降だいぶ薄れてしまっていたため、現在全体の1/3の復元工事が完成・一般公開されている本丸御殿の見学を兼ねて、名古屋城を観光することにした。
 まず、自身が利用する地下鉄市役所駅から近いため、正門ではなく東門から入場した私がほどなく目にしたのは、「二の丸広場」での「名古屋おもてなし武将隊」の織田信長、豊臣秀吉、徳川家康との記念撮影待ちをする大行列であった。私はこんなに近くで武将達を見る機会は今まで無かったので思いがけない遭遇にとても得した気分になり、武将達の近くに寄って行ってが、彼らがいかにも戦国武将らしい口調で観光客と会話しているのが聞けて、夢があって楽しかった。ハードとソフト両面で盛り上げている良い事例となっていると思う。
 続いて本丸御殿を鑑賞したが、総檜造りで檜が香る素晴らしい建物であった。前述した通り、現在公開されているのは全体の1/3に過ぎないが、その正面玄関の美しさや、室内に設えられた金色を基調とし、躍動感あふれる動物達や木々を描いた襖絵は豪華絢爛で目を見張るものがあった。好き嫌いというよりは、本格的に再現しているという心意気が伝わるような気がした。
 最後の目的である天守閣に入るとすぐに、私の中でしばらく忘れられていた城の感触はすぐによみがえってきた。展示で埋め尽くされた城内は昔から多少変化もあったのかもしれないが、ほとんど変わっていない印象で、最上階の展望室の景色は素晴らしいのだが、例えば窓が開放できるなど、もう少し開放感を感じられる造りになってくれないかなぁ、というのが正直に感じたところである。
 先日、名古屋城の話とは別の話として、大阪登文会の名誉会長の畑田耕一氏と大阪府教育委員会の林義久氏が著した「伝統的木造住宅の住育の力と歴史的建造物の保存継承」という記事を読む機会があったが、その記事の中で「住育」という言葉に出合い、改めて伝統的な木造建築についてその価値を考えさせてもらえる良い機会となり、また同時に名古屋城の木造化の話が私の頭に浮かんできた。「住育」とは、伝統的木造住宅に住むことは、そこに住んできた人たちの歴史や様々な工夫に触れることになり、自然と大切な教育につながる、という内容である。名古屋城を久々に訪れた後、しばらくして改めて感じるのは、天守閣がもし木造であったならば、私の体はいったいどんなことを感じるだろうか、ということである。「住育」ならぬ「城育」なるものがあるとすればぜひ体験したいと思ったのである。

■伝統的木造住宅の住育の力と歴史的建造物の保存継承
http://www.culture-h.jp/tohroku-osaka/jyuiku-pdf.pdf


おもてなし武将隊と撮影

本丸御殿入り口

本丸御殿内部廊下

本丸御殿の襖絵

天守閣を望む

(2016.1.19/大河原章介)