愛知住まい・まちづくりコンサルタント協議会の2014年度12月交流会で、岡崎市松本町を訪れた。今回の目的は、岡崎中心市街地の北のはずれ、松本町内にある松應寺を中心に形成された松應寺横丁の空き家活用の取り組みを視察することである。現地では、この取り組みに携わったNPO法人岡崎まち育てセンター・りたの事務局長・天野裕さんに、まち歩きの案内と空き家活用の取組みの説明をしていただいた。
松本町は、徳川家康の父、松平広忠公の廟所がある松應寺を中心に江戸時代は門前町として、明治後期から昭和中期頃までは花街として栄えたところである。終戦間際の空襲で町の8割が消失、その後に松應寺の境内に木造の商店街が形成され、現在老朽化が進んでいる。天野氏が関わるようになった2011年当時は14件もの空き家があり、うち7軒が所有者不明であった。こうした状況を何とかしようと町内会、松應寺住職、祭事役員、地元住民、中間支援組織(りた)でまちづくり協議会を組織し、まず、松本町住民を対象としたまちづくりアンケートを実施した。全町民374名のうち51%の回答を得て、回答者の7割以上が「少子高齢化」と「空き家・空き店舗の増加」を課題と認識していることがわかった。さらに、町民の多くが松本町の魅力に「連帯感」や「魅力」を感じていることがわかった。
この結果を受け、まずは、町内外に松本町の関心を集めるため、お寺の境内と空き家を活用したお祭り「松應寺横丁にぎわい市」を2011年11月に実施した。知人などの伝手で呼び集めた趣味の手作り作家が出店し、予想を上回る1,000人以上来訪した。このにぎわい市は、以後年2回定例化している。
次に空き家活用に取り組み、第1号として地域魅力拠点「松本なかみせ亭」を2012年9月に開設した。軽食が提供できる厨房と、雑貨を販売できるレンタルボックスからなる。これらの取り組みと並行して、空き家の所有者を突き止めて意向を把握し、空き家マッチングを進めた。徐々に空き家を貸してもよいという物件が出てきて、2013年8月にはあいちトリエンナーレ2013の展示会場として3件活用されたこともあり、魅力を感じた入居希望者が出てきて徐々に空き家活用が進んだ。その結果、当初あった14件の空き家のうち7件の再利用が決まった。
にぎわい市、空き家マッチングと活動が進むにつれて徐々に関わる人が増え、次はお年寄りの暮らしサポートに取り組んだ。町内会長、老人会、民生委員、地域包括支援センターとりたが連携し、2014年6月に会員制惣菜屋を開設した。町内の高齢者10〜15名を対象とし、週2回17〜18時限定で会員の高齢者が惣菜屋に出向いて食事を受け取りに来る。営業時間を絞ることで運営側の負担を軽減しながらお年寄りの交流機会を創出し、地域で見守る総菜屋として機能しているという。
この事例は、中間支援組織であるりたが加わり様々な主体が連携して人のつながりを大切にして取り組むとともに、天野氏自身が岡崎市出身で松應寺横丁に魅力を感じて自ら移り住んで住民となることで、いろんな事業が同時並行的にスピーディーに動いている。地域に魅力を感じたヨソモノが地の人となりまちを変えていく、そして新たな仲間が集まってくる、そんな事例を視察でき有意義なひとときだった。 |