このコンテナを積み上げた変わった建物は、設計者である大建metの自社オフィスである。
現在、全国的に空き家、空き地の増加による住環境の悪化が問題となっているが、一つの解決策として考え出されてのが、この建物のコンセプト「モバイル建築」である。空き家、空き地の増加の原因となるのは、土地は一旦人に貸して建物が建ってしまうと、簡単には所有者の思い通りにはならなくなることだ。そこで、土地所有者が「この建物だったら、いざというとき簡単に移動できるので土地を貸してもいいか。」という気持ちになってくれれば、空き家、空き地として放置された土地を活用する機会が増えるのでないかというのがこの設計者の狙いだ。
ここで採用されたモバイル的な構造は、鉄骨のフレームにコンテナを置いていくという工法で、フレームは地中梁を作らず、柱は各層で抜けるようにできているため、解体が容易に行える。コンテナを構造として積み上げていく方法もあるが、法規上、特注のコンテナを作るしかないそうで、非常にコストがかかる。そのため、コンテナを主構造と切り離した二次部材として扱うことで、海運コンテナを建築に利用することができたそうだ。使用したのは、中古の海運コンテナで、それ自体はたったの15万円+輸送費用だそうだ。
アトリエ系の設計事務所なので、仕上げも興味深い。外装では中古コンテナのさびれた趣にこだわり、錆が見えるように錆止めをしているそうだ。内装では、断熱材の代わりに遮熱シート(保冷バックの裏地などでよく見る)を使用していて、そのまま仕上げとして張っている天井は、照明の反射板の役目もしている。合板の端材と梱包用のテープで、どんな大きさの棚も簡単に作れてしまうオリジナルの収納も面白い。屋外テラスの手摺は、工事現場などで使用するセーフティネットと呼ばれるポリエチレン製の安価な網で作られていて、コンテナの雰囲気とよくマッチしたデザインだ。
さて、この事務所の代表 鈴木えいじさん曰く、都市に虫くい状に増え続ける駐車場問題の新たな解決策として、「(仮)すごろくガレージ」を検討中とのことだ。また、斬新な建築が見られそうで楽しみである。
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