建築学会東海支部都市計画委員会恒例の春の交流会で東海市を訪れた。太田川駅の高架化が2011年12月に完了し、名鉄線に乗車していると太田川駅周辺の変貌が目に入る。以前と様変わりした様子に一度じっくりと現地をみて話を伺いたいと思っていた。
まず、ソラト太田川3階市民交流プラザ−この施設は駅東の再開発として民間事業者によって開発されたもので市が床を購入したという−の会議室を借用し、美濃部副市長から東海市の歴史を都市計画全般について、大崎専門監から中心市街地の諸事業についてお話を伺う。長らく事業に関わられていただけに裏話も含め興味深いお話を聞くことができた。
最初、駅を降りた時に感じた「何故、こんな立派な3階建の駅舎が必要だったのか」。利用者にとっては、名古屋行の乗り場が2階と3階に分かれており慣れないと戸惑う。それでもあえて3階にした理由は名古屋駅から中部空港への輸送力強化のため。そもそも一旦断念した高架化が実施されるようになったのも中部空港が常滑沖に決まったことが要因だという。名鉄の強いニーズがあって高架化が実現したのだ。
土地区画整理事業、再開発事業、連続立体交差事業の3点セットで事業が進められているが、大きな特徴は駅前の50m歩道だろう。駅前の贅沢な空間に驚く。もともとは緑道として計画されていたが、都市計画道路とすることで補助が大幅に増えることから変更されたという。この歩道はどんでん広場と名付けられ、山車などの祭や朝市、ウィンターイルミネーションなど様々なイベント空間として活用される。
駅西にも30m歩道があり、この突き当りに近隣公園が配置されている。そのロケーションに目をつけたのが日本福祉大学。新設する看護学部に美浜キャンパスから経済学部、国際福祉開発学部が移転し、2015年に東海キャンパスが開校する。大学にとっては歩道と公園が大学のために整備されるようなもの。都市計画公園の計画変更で対応するものであるが、大学のニーズと地域のニーズが一致した、まちづくりの好例といえるだろう。
このような大規模な開発事業が実施できるのも裕福な東海市だからという点もある。中心街整備事業に投入された市費を人口で割ると1人あたり40万円を超えるようだ。東海市の顔として生まれ変わった太田川駅周辺の豊かな公共空間を市民がいかに使いこなすかが重要だろう。地域住民によって街なみづくりのルールも定められているという。山車まつりなど歴史のあるまちでもある。歴史と伝統も大切にしながら、市民が愛着を持つ新しいまちとして生まれ変わることを期待したい。 |