都市住宅学会中部支部の見学会で高齢者共同居住事業「ナゴヤ家ホーム」を実施している上飯田荘(北区)を訪れ、話を聞いた。
この事業は60歳以上の高齢単身者が市営住宅の1住戸を2人または3人で共同居住するもので、入居者の孤立死防止や高齢者の入居機会拡大への対応策として、昨年度上飯田荘(2住戸)でモデル実施。その成果を受けて、今年度は本格実施として上飯田荘のほか楠荘(千種区)、中島荘(中川区)の10住戸で実施されている。
市営住宅の目的外使用でNPO等が住戸を借用し、入居者はNPO等と見守りサービス付き入居契約を結ぶ。LDK、トイレ、風呂は共同使用で入居者が共同で使用する機器(エアコン、テレビ、冷蔵庫等)は市が設置している。昨年度、実施したものは3DKの住戸を改造し、南面3室としたタイプと南面2室・北面1室のタイプであったが、北面の個室は人気がなく、今年度実施はこのタイプはない。南面3室の3人用と北面1室も共用スペースとした2人用としている。
市営住宅への単身高齢者の応募倍率は40倍を超え、またシェア居住が広がりをみせている中で、全国にも類をみない実験的取り組みとして興味深い。しかし、話を聞いてみるといくつかの問題点もあるようだ。
1つはシェア居住が想定したようにはうまく機能していないという点。入居当初は当番制で一緒に食事をしていたが、そのうち個室で各自が食事をとるようになったという。風呂も各自がお湯を入れなおすので、水光熱費はシェア居住だからといって負担が減るということにはなっていないようだ。
また、今年度26人の募集に対し応募は15人。応募割れとなってしまったのは、家賃が1/3になってもそこに見守りサービス料が加算されると負担額は家賃と同額程度になってしまい、家賃面でのシェア居住のメリットがでていないことがあげられる。サービス料が高くなるのは、対象とする人が少ないために見守りの人件費を割るとそうなってしまう。対象戸数が少ない中で実施している過渡期での課題ともいえそうだ。
2人タイプでは家賃は1/2なので見守りサービス料が加算されると、1住戸を借用するよりも負担額は大きくなるが、応募は2人タイプの方が人気がある。3人タイプでは個室が狭く荷物を置くスペースも少ないし、3人で住むことのリスクを考えると、少し高くても2人タイプの方がよいということだろうか。
若者でシェア居住が広がっているのは、共同生活が楽しいということが背景にあるようだが、高齢者の場合は安心とシェアによるコスト軽減といった点がポイントになりそうだ。シェア居住に対するニーズはある。そのニーズにあったシェア居住をどのように供給していくか。今後の名古屋市の取り組みに注目していきたい。 |