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あいちトリエンナーレ2013プレイベント
「オープンアーキテクチャー・愛知県庁大津橋分室・伊勢久(いせきゅう)株式会本社」
以前、このメールマガジンでも紹介した「オープンアーキテクチャー」のイベントが、あいちトリエンナーレ2013のプレイベントとして11月3日に名古屋でも開催された。「オープンアーキテクチャー」とは歴史的に価値のある建物などを公開し、その魅力を広く伝えることで地域の財産として、まちづくりに役立てていこうというイベントである。
第1回の開催は、愛知県庁大津橋分室・伊勢久株式会社本社、名古屋市市政資料館、愛知県庁舎、名古屋市役所本庁舎の4コースが実施され、私は、愛知県庁大津橋分室・伊勢久株式会社本社コースに参加した。以前から大津通りを通るたびに気になっていた建物で、他の建物は通常でも入る事ができるが、こちらの建物にはこうしたイベントでもないと入れない。
当日は天候にも恵まれ、30名ほどの参加者が集まった。受付を済ますと、歩道上で建物の解説が始まった。解説は県の職員、伊勢久の社員、名古屋市立大学名誉教授の瀬口哲夫先生が担当した。
まず、愛知県庁大津橋分室は、1933年に愛知県信用組合連合会が建設し、現在は愛知県の県史編さん室が使用している。当時金融機関の営業業務を行っていた1階のホールは、現在は書庫として使用しているが、豪華な装飾の漆喰天井は当時のままである。また、階段室も見せ場で、曲線を描く手摺や、丸窓を見学させて頂いた。
伊勢久株式会社本社は、染色薬品を扱う会社の本社で1930年竣工である。特徴はスパニッシュ風の螺旋状の柱や、薬屋にちなんで施されたと言われる窓上部の薬壷の意匠などだ。現在も1階には多くの絵の具や薬剤が並べられ、店舗として使用されている。戦時中は空襲で火災になりかけた事があったが、社員総出で火を消し止めたそうだ。社員の方々はそうした歴史に誇りを持って今でもこの建物を大切に使っているという。
両建物とも、とても手の込んだ意匠が施されていて、現代の建築では表現できない魅力がたくさんあることが分かった。特に実物を前にしての解説は一般の人にも分かりやすく、いっそうこの建物への興味が湧いた方もいただろう。ただ、歩道上での解説は、歩行者や自転車のじゃまになるし、車の騒音などで解説が良く聞こえないなどの課題もあった。このあたりは、旅行会社が使っているイヤホン式のワイヤレスガイドマイクを使えば解決するだろう。
あいちトリエンナーレ2013では建築的な視点の作品に力を入れていくということで、こうした取り組みに今後も期待できる。
愛知県庁大津橋分室(右)・伊勢久株式会本社(左)
愛知県庁大津橋分室の1階営業室の漆喰天井
伊勢久株式会本社のスパニッシュ風の柱
歩道上で解説する瀬口哲夫先生(中央)隣はトリエンナーレ芸術監督・五十嵐太郎先生
(2012.12.17/堀内研自)