トリエンナーレスクールとは、2013年開催のあいちトリエンナーレに向けて、現代アートを楽しみながら学ぶレクチャーシリーズである。今年度の前期プログラムは5月から8月に開催される計4回で、第1回が5月26日愛知芸術文化センターで行われた。1回目のテーマは「作品との対話について」で、ゲストに森美術館のアシスタントエデュケーター白木栄世氏、進行役にあいちトリエンナーレ2013キュレーターの住友文彦氏を迎え、一般から約100名の参加があった。現代アートは難解で分かりにくいという批判を耳にするが、このレクチャーはこうした現代アートを前にどのような対話が可能なのかを探ることが目的である。
まず、現代アートを鑑賞するとはどういうことかというレクチャーから始まった。アートを前に「これは何だろう」と思う事が、いかに経験として心に残るのかという問いに対して、まず、作品を前に視覚や空間の体験によって何かを感じることと、その作品や作家の歴史的や政治的、社会的な背景を知る事によって得られる理解により、鑑賞という行為が成り立っているとした。そして、白木氏は「現代アートには何かを変える力は無いかもしれないが、新たなものの見方を教えて議論を起こしてくれるもの」と結論づけた。
また、住友氏はキュレーターの立場から教育普及プログラムの重要性にふれ、自身が作家や作品の創造力の秘密にふれながら、そのすべてを伝えられないジレンマを語った。例えば、その作品を丁寧に解説することで、作品の解釈を一面化してしまうという問題が起こる。これに対し、白木氏は「教えるのではなく、作品に近づこうとしている人たちをいかにサポートできるかが重要である」と語った。
最後に会場からは、「学校での美術教育は教育指導要領で定められた結論を教えているのに対し、美術館での美術教育は美術をきっかけに社会への疑問を持ってもらう事が重要である。」という貴重な意見が出された。
あいちトリエンナーレ2013のテーマは「揺れる大地」である。このテーマである以上、政治的、社会的な問題は避けて通れない。アートが現代社会にどのような疑問を投げかけるのか楽しみである。 |