「あいちトリエンナーレサポーターズクラブ(通称LOVEトリーズ)」とは、昨年開催された国際芸術祭「あいちトリエンナー2010(以降AT2010)」を応援するために結成された市民団体です。芸術祭の終了とともに一時は活動を休止しましたが、次回2013年の芸術祭開催に向けて、今年の1月から本格的な活動を再開しています。私もAT2010開催期間中に会員登録はしたものの、あまり活動には参加しなかったので、今年から顔を出すようになりました。その活動の中で、月に1〜2回、「トリ勉」という現代アートに関する勉強会が行われています。毎回テーマに合わせ講師を招き、2時間程度のレクチャーや意見交換を行います。場所は元事務局のあった伏見の長者町のビルで、会員を中心に20〜30人くらいが集まります。
2月25日開催のトリ勉vol.13では「あいちトリエンナーレ2010の展示空間を通して」というテーマで、アーキテクトとして参加した武藤隆さんを講師に芸術祭の舞台裏のお話を伺うことができました。武藤さんは東京芸大を卒業された後、安藤忠雄の事務所に10年ほど勤められ、その間に多くの美術館の設計に携われたそうです。その後名古屋で独立して設計事務所を営む傍ら、東海地区の芸術批評誌「REAR」の編集にも参加されてきました。
AT2010では建築をつくるという一般的なアーキテクトの仕事とは違い、すでに決められていた作家と会場の関係を、可能な限り最高なフィッティングにするため展示空間の微調整を行うことが役目だったそうです。微調整とは言っても、すべての作家と会場を1人で把握、調整するだけでも大変な作業量なのに、作家からのプランの提出は遅れる、プラン通りに展示したらやっぱり変えてくれと言われる、開幕直前はお盆休みで職人が居ない、お金がない、などなど、想像を絶する雑務、調整、力仕事をこなされたそうです。本当にご苦労
さまでした。
また、西野達さんというアーティストの作品にまつわる興味深いお話もありました。西野さんは、街のモニュメントや街路灯など日常になじんだ公共物を取り囲むようにリビングルームなどのプライベート空間を建築してしまう作品が有名で、名古屋のどこでつくられるのかが注目されていました。しかし、完成した作品は大きなネオンサインを街の真ん中でクレーンに吊るすという作品で、これはこれで西野さんらしいのですが、残念に思っている人も多かったようで、会員からもそのへんの経緯の質問が出されました。
西野さんとしても初めは名古屋城の金の鯱を取り囲んでホテルの1室を作る「金鯱ホテル」というプランを出されたそうです。当然お城の屋根の上に部屋をつくるのですから、非常に難しい企画の上、当時名古屋城は名古屋開府400年のイベント目白押しでとても許可が下りる状況では無かったそうでボツになりました。次の案「テレビ塔ホテル」ではテレビ塔の構造ではホテル分の荷重をのせるのは危険とされ却下、次の「丸栄」の栄マークの所につくる案は、動線の問題などで実現できず、そのうち時間切れとなってしまったそうです。
しかし、「テレビ塔ホテル」は地デジ化でテレビ棟の役目が終わり、アンテナ設備が撤去されれば荷重の問題がクリアーされるそうで、次回は実現できるかもしれないということです。あいちトリエンナーレも回を重ねて行けば、「金鯱ホテル」のような壮大なプロジェクトが可能になっていくかもしれません。そのためには、サポーターズクラブのような市民活動を継続的に行って行くことが重要で、不可能を可能に変える大きな力となるでしょう。興味のある方は下記まで。
あいちトリエンナーレサポーターズクラブ事務局
名古屋市東区東桜1-13-2
TEL: 052-971-6113 FAX:052-971-6115
Mail: office@atsc2010.com
URL: http://www.atsc2010.com/ |