9月上旬に、都市住宅学会中部支部公共住宅部会の見学会で、サンコート砂田橋とジョイフル砂田橋を訪れた。
愛知県住宅供給公社の賃貸住宅であるサンコート砂田橋は、昭和29年度から33年度に建てられた住宅団地を平成16年度より3期に渡って建て替え、今春ようやく全てが完成した。以前の住宅団地は、4・5階建てRC造18棟486戸であったが、サンコート砂田橋は、9・10階建てRC造3棟357戸となっている。賃貸住宅のほか、生活利便施設が誘致され、第1期、第2期では賃貸住宅と複合商業施設が、第3期では住宅・福祉の複合施設であるジョイフル砂田橋と医療施設が建設された。
賃貸住宅357戸のうち130戸が高優賃(※)となっており、バリアフリー仕様のほか、民間の警備会社と連携して「緊急対応サービス」や「安否確認サービス」が提供されている。このサービスは1住戸月額735円で受けられ、9割以上が契約しているとのこと。敷地内には高齢者支援施設や子育て支援施設があり、少子高齢化への配慮がなされている。
また、環境共生住宅であることも大きな特徴としてあり、敷地内にはビオトープやクラインガルテン(市民農園)が、付属施設の屋上にはハーブガーデンが設けられているほか、雨水再生利用や太陽光発電利用、立体駐車場の壁面緑化など、環境に配慮されたつくりとなっている。ビオトープエリアでの里山自然環境の部分的回復や野鳥・昆虫等の生物の誘引等の観点から「生物多様性保全に繋がる企業のみどり100選」(主催:財団法人都市緑化基金)にも選定されている。
サンコート砂田橋の南西角に位置するジョイフル砂田橋は、住宅型有料老人ホーム(38戸)、高優賃(52戸)、特養(定員20名)、女性専用ワンルームマンション(16戸)、ファミリー向け賃貸マンション(47戸)が併設された住宅・福祉の複合施設で、社会福祉法人サンライフによって運営されている。8階建てで1階には内科・整形外科のリハビリクリニック、デイケア、防災センター、美容院、レストランが設けられ付属施設も充実している。今年3月にオープンしたばかりだが、高優賃、一般賃貸住宅はすでに満室、住宅型有料老人ホームも残り3室と非常に好評だ。住宅型有料老人ホームの内部を見学することができたが、室内は開口部が広く、ナースコールやリズムセンサーが設置され、相談員も2名配置されていて万が一の時でも安心だ。また、パブリックスペース(廊下)も広く、豪華なつくりであった。多世代交流をコンセプトに、女性専用ワンルームやファミリー向け賃貸マンションが併設されているが、高齢者との交流はイベント時に顔を会わせたり、あいさつをする程度にとどまっているようだ。多世代共生は他でも見られるが、想定していたよりも交流が図られていないケースが多いように思う。間取りに工夫が必要なのか、イベントなどソフト面の充実を図るべきなのか、こういった点もまた一つ課題に感じた。
※高優賃:高齢者向け優良賃貸住宅の略称。高齢者が安全に安心して居住できるように、バリアフリー仕様や緊急通報装置の設置など一定の整備基準を満たして供給する高齢者向けの賃貸住宅。 |