南大津通(700m)で歩行者天国が社会実験として、9月18日〜11月13日までの期間の日曜日(12:00〜17:00)に開催されている。主催は南大津通歩行者天国協議会である。合計9回の日曜日が含まれるが、10月16日はなごや祭りのパレードが行われるため実施されず、8回となっている。名古屋で歩行者天国の実施は2度目である。1970年9月6日〜1984年9月末までの14年間である。
◆恒常的な歩行者天国の嚆矢 旭川平和通買物公園
歩行者天国の嚆矢は北海道旭川市の平和通買物公園である。歩行者天国実現の背景には、当時、札幌への一極集中に対する道内第二の都市の地盤沈下に対する住民の不安があった。そこで市と地元商店街若手経営者等が幹線道路の平和通り(1,000m)を「買物公園」にする構想を打ち上げるも、市民や関係者、関係行政機関の反応は冷たかった。そこで地道な機運醸成のための広報活動や積極的な関係機関への説得を通じ、1969年8月に12日間の交通社会実験にこぎ着けた。実験期間中は平常の人出の5〜6倍と市民の支持を得、また懐疑的な商店主の賛同を得、様々な環境整備が行われることで、恒常的(毎日)歩行者天国が1972年6月1日から始まり、今日まで継続している。
◆41年前の名古屋の日曜遊歩道
他方、名古屋市では南大津通(0.7km)では“なごや日曜遊歩道”として1970年に市の主催による社会実験を開始し、翌71年から本格的実施に移行した。72年には道路交通法が改正され、「歩行者天国」が位置づけられたため、警察主導による実施に変わった。しかし、道路上での舞台の設置やゲーム等を禁止したため、歩くだけの道路では魅力がなく、利用者の減少やゴミ等への批判、周辺道路への交通混雑が顕著になったため、1982年に地元商店街から中止の要請が出され、1984年に中止された。
◆今年の歩行者天国
このような経緯があっての今年度歩行者天国の社会実験である。今日では自動車を極力使わず、都心は歩いて楽しむ時代となっている。そのような動きに機敏に対応して社会実験に持ち込み、実験日のたびに主催者からスタッフを出し、警備員も雇って管理している地元のパワーには敬服する。
今回の南大津通での歩行者天国の実施に伴って、歩行者がどれだけ増加したかをカウントしていないそうだが、感覚的には1.2〜1.3倍ぐらいではないか。いままでは狭い歩道をひしめき合って通行していたが、車道に広げられることでゆったりと歩くことが可能になった。そのためかベビーカーを押す若い家族が増えたと感じている。
◆いくつかの課題、まずは3つ
社会実験を超えて本格導入のためにはいくつかの課題があるように思える。
@歩いて楽しい歩行者天国を………アスファルト舗装の車道上を単に歩くだけでは、歩道幅が広がっただけで面白みは全くない。このままでは27年前に中止した理由のひとつ「楽しめる歩行者天国」になっていない。その結果、前回と同様に利用者が減少して、再び中止になる恐れがある。旭川の平和通買物公園では、フリーマーケット(朝市を含む)、オープンカフェ、ストリートパフォーマンスなどが行われ、道行く人を楽しませている。名古屋では歩行を阻害するという理由でそれらは禁止されている。ルールを決めて実施するなど、これを打破することが必要ではないか。
A歩けば疲れる、休憩施設を………歩けば人々は疲れるものである。南大津通は人通りが多いこともあって、休憩のためのベンチは少ない。この歩行者天国では右折レーンの3箇所で、オープンカフェセットが置かれている。これだけでは不十分である。実態を見ると中央分離帯のブロックや衝突防止壁に腰かける人が如何に多いことか。一つのレーンを潰して休憩レーンをつくるぐらいが適当である。
B継続できるマネジメントを………問題が起こらぬよう、警備員も雇って、細心の注意を払いながら協議会のスタッフがかかりきりになっている。これには労力だけでなく、資金もかかっている。それで大勢の人が集まり、店の売り上げも大きく伸びれば実施し甲斐があるというもの。にぎわいと売り上げ向上に向けた沿線店舗の協力、そして前述@とA、地域の総合力を発揮していく必要がある。
是非、歩行者天国を成功させて、本格実施に持っていければと思う。道路幅員が広い名古屋ならではの活性化にむけた展開のひとつである。久屋大通りのオープンカフェ、南大津通の歩行者天国を名古屋の名物にしたいものである。
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