先日、都市住宅学会中部支部の見学会で、有松地区の旧東海道沿いにある「中舛竹田家」を改築してつくられた高齢者施設を訪れた。
「中舛竹田家」は江戸末期の建物とみられ歴史ある建物であったが、老朽化もかなり進んでいたことから、当初は、取り壊してアパートが建てられる予定であった。しかし、一方で保存してもらいたいとの声もあり、この話を聞いた河村たかし市長から取り壊しの直前にストップがかかり、一転して改築されることになった。以後、「古民家再生プロジェクト」として管理会社や建設会社など民間事業者による協議が重ねられ、「中舛竹田家」はデイケアサービスセンターに改築、新たに高優賃(中舛竹田荘)が敷地内に建築されることになった。改築ともなれば莫大な費用がかかるが、この点は市が有松まちなみ保存ファンド募金を設置して寄付金が集められた。
改築といっても、建物の老朽化が著しかったことから、一旦更地にし、再利用できる部材のみを使用して、外観は江戸期の様式を再現するという形で再建築された。部材も老朽化しており、残念ながら梁や建具などの一部しか再利用されていなかったが、天井の仕上げ材がなく、梁などかつての部材をみることができる。二階建てを平屋にしたことで天井も高く、気持ちのよい空間であった。
今回新たに建てられた高優賃は、鉄筋2階建てであるが外観は和風仕様でつくられている。既に入居が開始されているが、現時点での入居率は半分とのこと。高優賃は礼金が取れないなどの理由から民間仲介業者にとっては扱いにくい物件のようで、自治体のホームページに案内が掲載されていても高齢者にとっては必ずしもよい方法とは言えず、どのように高齢者へ周知するかというのも一つ大きな課題としてあるようだ。
「中舛竹田家」周辺を歩いてみると、伝統的家屋もいくつか保存されよい雰囲気が感じられたが、既に取り壊されて新しい現代風の建物が建ってしまっているところも見受けられた。資金調達や維持管理方法など克服しなければいけない課題も多いが、歴史的な建物が少しでも多く名古屋に残されていくことを願いたい。 |