建築学会東海支部都市計画委員会恒例の春の交流会で桑名を訪れた。桑名のまちづくりには委員長の浅野聡先生がずっと関われており、私もいくつか興味深い取組みに関わらせてもらった。それらはこのメルマガでも紹介しているが、今回は以前から興味深いまちとして注目している赤須賀のまちづくりが取りあげられたこともあり、そこでの報告も含め紹介したい。
赤須賀は重点密集市街地に位置づけられている漁村集落で、狭い路地に住宅が密集しており、猫が跳び移れるほど軒が隣接していたことから「猫飛び丁」と名付けられたという。桑名のまちづくりブック「まちづくり極意 くわな流」でも特徴あるまちとして赤須賀を取り上げており、まち歩きでも人気のまちだ。
地区面積8.1ha、住宅戸数721戸。住宅密度は89.0戸/ha。換算老朽住宅戸数が89.6%、100u未満敷地割合が54.7%という典型的な密集市街地である。全国的傾向と同様、人口減少、高齢化、空き家化が進行している中で、まちづくりとしての取組みが始まったのが平成16年。国交省や三重県の取組みの中で懇談会が開催され、これらを母体として平成18年4月に「赤須賀まちづくりの会」が発足。「老朽住宅」「避難路・避難場所」「住民啓発」の3つの検討部会に分かれ検討が行われた。
活動経緯をみると、耐震診断の啓蒙などかなり熱心に活動が行われた様子がわかる。しかし、なかなか目に見える成果がでていないのが現状だったが、活動4年目の平成21年度に「空家老朽住宅等除却補助事業」が創設。空家の除却が徐々に進み、「5年間の空地確保」「災害等発生時の空地の使用」等をルールとして定め、地区の防災性向上に役立っているという。
まちを歩くとその道の狭さ、敷地の狭さが実感でき、建替えの困難さがわかるが、一方で懐かしい風景には安らぎを感じる。新しい建物もできているが違和感は否めない。火事が起これば広く延焼することが予想されるが、その危険性を知っているためなのか、火事はほとんど発生していないという。赤須賀のまちは何度も移転が行われているが、その歴史が路地の形態としても残っており興味深い。全国的に路地の持つ魅力が再評価されているが、赤須賀でも地域の個性を守ることの重要性が意識されている。格子や2階に手すりのある町家の町並みを含め、まちの魅力として地域の人々が評価し継承されることが、防災まちづくりとともに進められることを期待したい。
最後にこの春の交流会について。この取組みがはじまったのは20年前の岩倉。当時の佐藤圭二委員長の発案という。私にとってはいろいろな興味深いまちづくりに触れるとともに、様々な先生方と知り合うことのできる貴重な機会となっている。残念なのは参加者の年齢層がだんだん上昇し、若手の参加が増えないこと。特にコンサルタントの若手にはもっと参加してほしいのだが…。この点も期待したい。 |