近年、公営住宅においても高齢化が進んでいる。こうした状況の中、愛知県豊橋市にある県営岩田住宅自治会では、高齢者を対象とした団地喫茶が実施されている。
岩田住宅は昭和48年に入居が開始され、現在は580世帯1600人が入居している。65歳以上の高齢者の割合は17.5%と愛知県の19.7%(参考:H21年愛知県の人口)よりはやや低いが、高齢化が目立ってきたことから高齢者向けの団地喫茶が開始された。運営費は自治会から出ているが、運営スタッフは団地に住む主婦や民生委員ら4〜5名がボランティアで行っている。
団地喫茶は、月に一度集会所で開かれ、70歳以上の入居者であれば誰でも無料でモーニングセットが食べられる。参加者は、集会所に来るとコーヒーや紅茶など好きな飲み物を自分で入れ、パンやサラダや果物などを持って好きな席に座り、モーニングを食べながら同じテーブルの人やボランティアスタッフの方とおしゃべりをして過ごしている。私が尋ねた日は、近所のパン屋さんから購入したというメロンパンとスタッフお手製のポテトサラダなどが振る舞われていた。部外者の私もスタッフのご厚意でモーニングを体験させていただいたのだが、テーブルをご一緒した参加者のお一人が「人が集まっているところに来ると気分も明るくなる。月に1度こうした機会があることがうれしい。」と、とても楽しそうに話されていたのが印象的だった。また、岩田住宅の団地喫茶はモーニングだけではなく、身体を動かす運動の時間(約5分間)も設けられている。運動の時間と言っても、ただ皆でラジオ体操を行うのではなく、プロのトレーナーが高齢者に合わせた運動を指導している。
自治会役員の方が「人とおしゃべりをしてコミュニケーションを図ることが何よりも大事ではないかな。」とおっしゃっていたが、高齢化が進み、高齢者夫婦だけの世帯や一人暮らしの高齢者が増えていくと、ますますこうした高齢者が集う場が重要になってくるだろう。そうした中、今回の岩田住宅の取り組みは非常に参考になるものだった。
岩田住宅自治会では今回紹介した無料モーニングサービス以外にも、外国人居住者を対象とした日本語教室や出張ハローワークなど様々な取り組みが実施されている。また、外国人が多く居住していることから、何か困った時に相談できるようにと自治会事務所を開放している。事務所が自然と住民が集まってきておしゃべりをするアットホームな場所になっていることも非常に印象的であった。 |
団地喫茶の様子
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トレーナーの指導で運動する皆さん |
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