駄知(だち)町は、美濃焼で有名な岐阜県土岐市にあり、特産品であるどんぶりをはじめとする陶磁器の産地として知られている。現在、陶磁器産業が厳しい経営状況下にあり、それに伴い人口減少が進み、空き家・空き店舗が増加するなど地域全体の経済が低迷している。そこで、まちの活気の喪失に歯止めをかけ、かつてのにぎわいを取り戻そうと、陶磁器産業事業者、小売業者等が中心となり、数年前からまちづくりの委員会を組織し、県及び市の人的支援を受けながら検討を重ねてきている。平成20年には岐阜県地域活性化ファンド事業費助成金の支援を受け、今年10月までに地域活性化プランとりまとめる予定である。
この取り組みの一環として、まちの中心部の本町商店街で8月15日に開催された夏祭りに合わせ、盆踊りの会場となる広場においてライトアップ等の演出が行われた。この広場に接する不動川という小川は駄知町の人々に昔から親しまれてきたが、護岸をコンクリートで固められてガードレールが設置されているため、現在では地元の人達がこの川に親しむ環境になっていない。そこで、この日は広場の隅の川に面したところを「陶龍(=陶磁器製の灯籠)」の幻想的な灯りで演出し、広場の対岸にある製陶所の煙突をライトアップすることにより夜のまちを演出した。普段は明かりが少なくひっそりとしたまちであるが、この日は陶磁器産地のシンボルといえる煙突の一本が夜空の中に明るく浮かび上がり、「陶龍」の制作に参加した子どもの作品を見ようと本人や家族の人達が川の近くにまで足を運び、地元の人々の関心を惹き付けた。
ライトアップの照明の事業者の手配や、「陶龍」の製作における子ども達の参加・作品の焼成などの準備は委員会メンバーが主体的に行ったものだ。委員会の動きとしては、このライトアップや「陶龍」による演出の他にも、駄知の特産品であるどんぶりを使ったどんぶり料理の考案、地域資源を回遊する散策モデルコースの設定、瓦版の発行、マップづくり、地域資源の利活用計画、観光客を誘客する拠点施設計画など、様々な事業や計画づくりに取り組んでいる。
また、この夏祭りでは、盆踊りの会場で、愛知県の三河山間部に拠点を置き、全国で活動する和太鼓のプロ集団「志多ら」による公演があり、第2部には会場に来ていた子ども達から希望者を募って即興で指導した後、子ども達による和太鼓の演奏もあって会場が大いに盛り上がった。さらに、本町通の端から広場までの100m程度の空間は、普段はひっそりとしているが、この日は夜遅くまで店を開け、五平餅、手づくりパン・ケーキ、飲み物、おもちゃ、服などの商品を表に出し、魚つかみやボール投げのコーナーを設け、活気を呈していた。
弊社は昨年11月よりこれらの取り組みをお手伝いさせていただいており、委員会メンバーの熱意を常日頃感じているが、この日は駄知町の人々のパワーとまちのにぎわいづくりにかける意気込みを改めて実感した一日だった。 |