このメールマガジンでも何度かご紹介したJR岐阜駅前の再開発事業もいよいよ大詰めに来ており、現在、全権利者(167名)への同意書の提出をお願いしている。順調に進めば10月より地区の建物の取り壊しが始まる予定である。半世紀以上も続いたアパレル産業の中心地も、時代の変化とともにマンションやホテル、商業施設など新しい用途を取り込んだ37階建ての超高層ビルを含む複合施設に生まれ変わることになる。
こうした節目に、地元の住民が芸術家、大巻伸嗣さんの呼びかけに賛同し立ち上げたプロジェクトが「ぎふ問屋町プロジェクト2009」である。大巻伸嗣さんは、お父さんのお店が再開発地区内にあり、幼少のころは商店街やアーケードの上を遊び場としていたそうだ。まちが取り壊されることを聞いて、このまちの思い出を何とか多くの方々の心に刻んでもらおうと、自身が各地で発表している「Memorial Rebirth(思い出の再生)」というインスタレーションの開催を思い立つ。「Memorial Rebirth」は昨年開催された国際芸術祭、横浜トリエンナーレ2008でも注目を浴びた作品だ。1分間に1万ものシャボン玉を発生する機械を広場や街角に数十台設置し、無数のシャボン玉で満たされた幻想的な空間を作り出すインスタレーションである。参加者は見慣れた風景が非日常的な空間へ変化することで、風景をより強く記憶すると同時に、発生と消滅を繰り返すシャボン玉により、歴史や時間の流れを意識する。
プロジェクトは問屋町3丁目、4丁目の住民のご協力のもと、8月22日がアーケードの上で、23日がアーケードの中で行った。アーケードの上は危険なため、関係者のみへの公開であったが、アーケード内では、多くの家族連れが集まった。商店街にずらりと一直線に並べられた50台のシャボン玉発生機から、カウントダウンの合図とともに一斉にシャボン玉が湧き出すと、随所で子供たちの歓喜の声が上がる。夢中でシャボン玉を追いかける子供たちで満たされるその空間は、とても幸福な場所となっていた。子供たちにも大人たちにも、このまちの最後の思い出になったであろう。
その様子は、参加者が撮影した多数の写真により、9月11日(予定)からJR岐阜駅高架下のアクティブGで、11月10日から岐阜県美術館の企画展で展示される。また、地元の商店主が企画したもう一つのプロジェクト「フラワーロード」も問屋町3丁目、4丁目で8月31日から9月5日まで開催される。こちらは、岐阜市内の13の幼稚園が参加しパネルに折り紙などで花の絵を作成し、商店街いっぱいに並べるという企画である。興味のある方は、ぜひ見に行って頂きたい。 |