常滑市にはまちづくりの取組みとして注目できる取組みが2つある。1つは中部国際空港の対岸にあたり、観光スポットとしても注目されている「やきもの散歩道」であり、もう1つは大野町で取り組まれているまちの活性化にむけた市民の取組みである。
大野町は、かつて廻船問屋による海運業をはじめ、鍛治や味噌、酒造などで栄えたところで、5月に行われる大野祭りに見られるように古い歴史を有し、その面影がまちの随所に残るまちである。まちの活気が失われる中で、大野コミュニティという市民団体が「尾張大野古今散策」というまちの魅力を発信する取組みを行ったり、古い町家をギャラリーやバーなどに活用するなどの取組みが行われている。大野コミュニティが発足し20年以上が経過、古今散策も昨年が第9回。こんな大野町(正確には隣接する小倉町)に生まれた魅力的な空間を紹介したい。
「樂游館」。普段使わない漢字を使ったこの場所には、館長の岡さんの思いが込められている。
ここをはじめて訪問したのは昨年の9月。会議スペースとして使わせてもらったのだが、訪問した後に、興味深い取組みとして保存しておいた朝日新聞5/18の記事のことを思いだした。1階は喫茶スペースとげたや鼻緒の展示。2階は36畳の大広間。何故か懐かしい感じがして、ゆったりとした気分に浸ることができる。岡さんの経歴も興味深い。本職はグラフィックデザイナー。豊橋に住み、ワークショップによる公園づくりに取り組んだプラスベータのメンバーであり、そのノウハウが詰まった「こんな本がほしかった・・・ プラスベータ流 まちづくりワークショップ・マニュアル」のデザインも手がけられたという。最近、作成された世間遺産マップも岡さんのデザインだ。
ここでは、異なる文化が出会う場として、岡さんの多様な人脈を活かして様々な魅力的な取組みが行われている。昨年10月の古今散策の際には、第3回世間遺産写真展が開催されるとともに、釧路でアウトドアガイドをされている安藤誠氏のあぐら講座が開かれた。実は安藤氏のことはよく知らずに樂游館の夜の雰囲気を味わってみたくて再訪したのだが、釧路湿原やアラスカ・オーロラの話とその人柄に魅了され、子どもを連れてこればよかったと思ったほど。今年3月に行われたホーロー看板展とそのコレクターである豊川の佐溝氏と岡さんの対談+ライブという異色の取組みも興味深かった。私が拝見したのはこの2つだけだが、その他にも魅力的な企画がいっぱい。この5月24日(土)には「あんぽんたんかな」という歌藝の宴が行われるという。
様々な出会いと癒しの場。こんな場所が生まれることにより、まちの魅力はさらに高まる。各地のまちづくりでこんな場所が生まれることを期待したい。 |
樂游館
足袋会社の松屋が客をもてなすための別邸として昭和初期に建築されたもので、 表は西洋館、裏は和風というの2つの顔を持つ。
〒479-0862 愛知県常滑市小倉町5-84
tel. & fax. 0569-44-2550
mail:rakuyukwan@estate.ocn.ne.jp
(名鉄常滑線=大野町駅下車7分)
●開館時間=10:30〜18:00 ●休館日=月・火
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古今散策の日の樂游館
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鼻緒をすげる岡さん |
ホーロー看板展で |
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