岐阜県関市は700年に及ぶ刃物の歴史があり、中心部に位置するのが、全長2.5kmの関の散歩道である。刃物に関する観光拠点、仏閣・神社を巡り、桜の名所である関川、ローカル線の長良川鉄道を横切り、社団法人日本ウォーキング協会の「美しい日本の「歩きたくなる道」500選」に選ばれている。
さすが刃物のまちというだけあり、刃物に関する拠点施設はそれぞれの内容が充実している。関鍛冶伝承館では、刃物の歴史や製造工程、刃物の文化が生んだ数々の製品が展示されている。フェザーミュージアムでは、ひげにまつわる古今東西の歴史、医療機器など最新鋭の機器の展示のほか、ひげスコープでのひげや頭皮のチェック、安全剃刀のモニター体験もできる。刃物会館では、包丁、キッチン用品、ポケットナイフ、爪切、カミソリ、アウトドアナイフなどの直売を行っている。散歩道を歩くだけだと40分程度で一周できるが、これらの施設を見るだけでも最低2時間はかかる。さらに、散歩道の周辺にも刃物の直売や展示を行っている生産者もあり、ここまでじっくり回ろうとすると、丸一日かかると思われる。たまたま訪れた人を見ていると、ひげスコープに熱中する父親と男の子ども、展示に夢中になる男性とその様子を見ている女性のカップル、といったように男性向きなのかもしれないとも思えた。
刃物だけでも十分な観光資源であるが、散歩道の大半は一般の住宅地を抜けるため、立寄れるような場所や休憩できるところが少ない。途中、本町通という商店街のあるところを横切るが、日曜日は閉まっている店も多い。毎年10月に行われる刃物まつりではこの商店街も会場となるようで、今年の春には商工会議所主催で「関の刃物とまちおこし」と題して商店街の空き店舗を活用したイベントが行われる。このような取り組みを契機に恒常的にスポットができてくると、散歩道自体の魅力も出てくるであろう。
また、関市は周辺5町村と合併してV字型の形となり、北隣の美濃市を取り囲むような市域となった。美濃市は、防火用の「うだつ」の上がる町並みの保全・活用、地場産業の美濃和紙を使ったあかりアート展(毎年10月開催)などの取り組みで、観光雑誌などにもよく取り上げられ、知名度を上げている。関駅から美濃市駅までは4駅、距離で6、7キロメートルと近い。刃物の関、和紙とうだつの美濃と共同でPRすることも今後は必要であろう。
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濃州関所茶屋と関鍛冶伝承館(右)
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刃物会館(左)とフェザー安全剃刀関工場
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本町通商店街
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関川沿いを通る散歩道
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長良川鉄道を横切る散歩道
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名刀
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キッチン製品
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百徳ナイフの展示
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