世界遺産ならぬ「世間遺産」。いつまでも変わらないと思っていた景色や建物がどんどんなくなっていく。こんな中で、心の中にいつまでもとどめておきたいもの、思わず人に伝えたくなるものを世間遺産と位置づけている。2年前の一木橋あっちべたこっちべたフェスタで開催された写真展を見た時から、常滑でのこの取組みに注目していた。写真だけでも興味深いが、できれば現物を見たいと思い、2年前もカンを頼りに歩いてみたが、よくわからないままだった。
たまたま、常滑の2つのまちづくりイベントのことを調べていた時に、世間遺産放浪ツアーが行われることを知った。「世間遺産放浪記」の著者の藤田洋三氏も同行されるという。すぐに参加を申し込んだ。(ツアー開催日は2007.10.14)
世間遺産放浪ツアーは、INAXライブミュージアムを出発点とし、まずはお隣の東窯工業を訪問。3本の煙突が特徴的で世間遺産としてあげられてものだが、工場に入らせてもらうのは常滑のメンバーもはじめて。まさにそこはワンダーランドといってもよいほど魅力的な世間遺産が一杯。残しておきたいという工場主の方の思いが印象的だったが、地震がくると壊れてしまうのが心配。なんとかする手立てはないものかと思う。
名残おしさを感じながらも、そこから焼き物がいたるところにあり生活の匂いが感じられる路地や昔ながらの商店街を歩く。じっくりみるといろんな発見がある。写真でみるだけではわからない住んでいる人のこだわりが伝わってくる。
まちの歴史が現れている場所も興味深い。やきもの散歩道のみちは昔は石畳で、重い焼き物を大八車に乗せ、犬に引かせて運んだが、足が血まみれになったという。今は、その上にコンクリート、アスファルトが敷かれ、三層構造となっており、そのことがわかる場所がある。都市の記憶を伝えてくれるもの、それはまさに世間遺産である。
写真展に応募された場所を中心に歩いたわけだが、常滑のメンバーも今回はじめて気がついたという世間遺産にも遭遇した。建物の土台部分に焼き物が使われているのだが、その置き方はまさに芸術作品といってよい。
大善院では突然の訪問にも関わらず、お茶とお菓子をいただき、そこで日本画家の橋本関雪のアトリエを宝塚市から移築し、花井探嶺作の観世音菩薩像を安置する観音堂を作る計画があることを伺った。思いがあるといろいろな出会いがあって魅力的なものが生まれてくるということを感じた。
このツアーの発案はINAXライブミュージアム館長とか。世間遺産のマップづくりの計画もあるという。常滑の世間遺産の取組みも広がりを見せており、興味深い。自分のまちでも世間遺産さがしに取り組んでみたいと思う。
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東窯工業
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東窯工業に残る二連窯
このスタイルのものは他ではみられない。
一方で焼いている時にその余熱で他方の乾燥をしようというアイデア。アイデアはよかったが、あまりうまくいかなかったと笑って教えてくれた。
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焼き台を使った塀のある路地
熱心に語る藤田氏
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2年前は見つけられなかった
「かぎかぎ横丁」
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石畳、コンクリート、アスファルトの3層構造
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便器が擁壁に
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今回のツアーで新発見
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大善院にある花井探嶺作の仏像。
コンクリートで作られたにもかかわらず、
その繊細さに驚く。
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