この住宅は、名古屋市出身の現代美術家・荒川修作氏が基本構想を描き、名古屋市・名古屋市住宅供給公社が守山区に建設した、実験住宅です。建物はRC造の平屋建て(A棟)が1棟、2階建てが3棟(B〜D棟)あり、2LDK7戸の集合住宅です。
住宅のコンセプトは主に3つあります。1つ目は「環境に配慮した試み」です。中部電力、東邦ガス、日立、INAXといった企業とのコラボレーションで、外壁緑化、太陽光発電、風力発電、地下貯留槽による雨水利用、家庭用燃料電池、多機能エコキュート、家庭用ガスコージェネレイーションシステム、リサイクル建材の使用、など、実に多くの要素が盛り込まれています。
2つ目は「コミュニティを生む仕掛け」です。4棟の住棟は中庭に面して囲むように配置され、さらに花壇作りや水遊びができる空間が設えられています。住宅内のプランも特徴的で、家の中心にダイニングキッチンを置き、それを中心に個室が取り囲む間取りになっています。
3つ目は「身体感覚を呼び覚ます空間の創造」です。これは「養老天命反転地」や現在建築中の「三鷹天命反転住宅」とも共通するテーマです。荒川氏はこう語っています。「私がデザインした建築空間で生活すると、普段とは違う体の動きをしなければならない。体を動かすうちに活力が生まれ、今までとは違った意識や新しい感覚が芽生えてくる。(日経アーキテクチュア)」このコンセプトを一番よく表している住棟がA棟です。他の3棟はあまり「普段とは違う体の動きをしなければならない」ことがないように造られてしまっています。このあたりに、公共が造る住宅は常識を否定するコンセプトを鵜呑みにできないジレンマが表われています。
この住宅は、NHKの名番組「課外授業ようこそ先輩・荒川修作」でも紹介され、子供たちを招き授業が行われていました。番組の中で荒川氏は「何にでもNo!No!と言いなさい。」と、自分の生き方を教えていたのが印象的でした。建築界ではバリアフリーは常識ですが、段差だらけのA棟内部で、子供たちが生き生きと走り回る姿を見ていると、人間として本来必要とする空間とは何か、という問題を考えさせられます。
住宅は見学が可能ですが、見学日が決められているため、下記webでチェックしてください。
志段味環境循環型モデル住宅
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