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「文化のみち」その後

名古屋市東区
 「文化のみち二葉館(旧川上貞奴邸)」が2月8日に開館して、間もなく2ヶ月を迎える。来館者は3月末には2万人を超えたようである。それだけに市民の関心は高い。漫然と「文化のみち」へ行こうというよりも、「文化のみち」の二葉館に行こう言った方が目的は明確になり、友達も誘いやすい。二葉館を拠点にして「文化のみち」をそぞろ歩き、あるいは自動車で徳川園まで足を伸ばす人が増えている。二葉館効果は今のところ着実にあがっている。

 「文化のみち」沿道で開放されている建築物は多くない。決まった曜日に開放される旧豊田佐助邸(豊田佐吉の末弟)や橦木館(陶器商であった旧井元邸)のほか、市政資料館(旧名古屋控訴院・地方裁判所)や尾張徳川家の菩提寺である建中寺などがあるが、レストランとして活用されている建物(春田鉄次郎邸のデュボネ、中部電力初代社長の旧井上五郎邸のラ・グランターブル ドゥ キタムラ)は飲食すれば内部を窺うことができる。それなりの料金が必要である。

 しかし、多くの建物内部が見学できないからといって、文化のみちがつまらないというわけではない。歩きながら眺められる景観だけでも楽しい。なぜなら、江戸時代の町割に明治後期から昭和初期の近代建築が立ち並び、桟瓦がのり、白漆喰の小壁と竪羽目板の腰、切石貼の基礎を持つ門塀があり、それらの連なりと見越しの樹木が白壁地区の特徴ある景観を形成しているからである。

 名古屋に来た人を連れていく場所がないとよく言われているが、ちょっと空いた時間を有効に活用するには、名古屋駅からは産業技術記念館やノリタケの森や菓子問屋などがある「ものづくり文化の道」を、栄からはこの「文化のみち」を案内することができるようになった。

 先般、二葉館主催で開館記念連続講演会(2回)が開催された。そのうちの2回目は「川上貞奴と二葉御殿」をテーマに、「鬼才福沢桃介の生涯」の著者である浅利佳一郎氏に「川上貞奴物語−欧米旅公演と西洋化粧の普及−」を、あめりか屋の研究者である内田青蔵氏(文化女子大学造形学部教授)に「二葉御殿とあめりか屋−その建築的特質と復元の意義−」を講演してもらった。参加した市民は、決して平易な講演内容ではなかったものの、眠る人はおらず、熱心に聴講していた。浅利氏の講演は落語風で楽しく(今風に言うと貞奴は美空ひばり、桃介はホリエモンであるという説明は妙に説得的だった)、内田氏の講演はやや専門的ではあったが納得できる内容であった。単に文化のみちの景観を楽しむことに満足するのでなく、そこにまつわる物語を深掘りしていこうという市民ニーズがそこに存在する。行政当局およびこの施設では指定管理者の問題意識と知見のレベルの高さがますます厳しく問われていくのであろう。

 文化のみちも二葉館の開館で緒についたばかりである。空間の保存と物語の掘り起こしを同時に展開しながら、文化のみちの価値を高めていく必要がある。


去年の白壁の桜(2004.4.6)。今年は遅い。


移築復元された「文化のみち二葉館」
また訪れていない方は最低一度は是非。


(2005.4.4/井沢知旦)