日本政策投資銀行の藻谷氏が各地の講演会で「極めて衰退の著しい商店街・崩壊したまち」として紹介し、まちづくり関係者に悪い見本として知られている刈谷市銀座商店街で、再生にむけた本格的な取組が始まろうとしている。
銀座地区は、三河地域の中心地区として、かつては人通りの絶えない繁華な商店街であった。しかし、都市構造や消費者意識が大きく変わる中、商店街は、地域住民とかけ離れ、商店主の生活の糧を得る場としてのみの機能を重視し、「まちづくり」の視点で地域に貢献することは少なかった。むしろ、目先の利いた商店主は、まちづくりを放棄し、郊外に居を構え、より利潤の得られる大型店のテナントとして出店していった。商店街の魅力の低下に伴い、地域住民の生活を支えた食品スーパー・ユニー銀座店が撤退、急速に中心地区としての基盤を喪失していった。まちづくりのためにと市が取得したその跡地約5500uも、20年余りの長きにわたり、青空駐車場として暫定的利用のまま放置されてきた。まちの崩壊に危機感を抱いた一部の商店街主達は、5年ほどの歳月をかけ、優良建築物等整備事業を活用した店舗付中層マンションを平成11年に完成させた。自らの資産保全・処分という色合いが強く、また地域住民との関わりもあまりなかったが、人口を増加させ地区再生の先鞭をつける意義は大きかった。折しも、平成10年7月に中心市街地活性化法が制定され、商工会議所を中心に「まちの再生」を図るための検討が重ねられ、昨年より市有地を核とした銀座地区のまちづくりの具体的検討が開始された。これまでの反省から、商店主達は、まちづくりを商店主の金儲けの手段とせず、地域に根ざし、地域住民に必要なサービス・機能を提供することにより、豊かな「まちの環境」を創造しようという考えに切り替わりつつあり、地域住民にまちづくりへの参加を呼びかけている。
地域住民には長い歴史の中で培われた商店街に対する不信感が根強く、まだ、理解が得られないばかりか一部に反発の声もあるが、地域と一体になって進めようとする商店主達の「まちづくり」の挑戦が、今、動き始めている。
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