夫婦岩(めおといわ)で知られる二見浦は、大正から昭和初期にかけて海水浴客や修学旅行生など大勢の観光客で賑わい、JR二見駅から夫婦岩に至る道沿いには、重厚な妻入りの木造旅館が軒を連ねる旅館街が形成された。しかし、車社会が発達し、様々なリゾート施設などが周辺地域に開発されてくるに伴って宿泊客は減少し、昔に比べるとまちの勢いがなくなってきている。
このような状況の中、平成9年度に、国が策定するHOPE計画(地域住宅計画)の指定地区として旅館街が選ばれ、歴史的な街並みを生かしたまちづくりについての様々な提案が盛り込まれた計画が策定された。そして、計画の実行部隊として二見浦まちづくり検討会議が結成され、住民が参加するまちづくり活動がはじまった。旅館の主人や建築家など、現在10人の会員がいる。
検討会議では、町並みを守るための条例制定に向けて二見町と一緒に検討を重ね、その成果として平成13年度には「二見町の景観・文化を守り、育て、創る条例」が制定された。この中で、建物の改修や建て替えにあたり基準とする構造、高さ、素材、色などが示され、改修費用の3分の1、上限100万円が町より助成されることとなった。この基準を適用した改修の第1号として、土産物店が建具などの修理を行った。
また、HOPE計画で提案された「道路の修景」を実現化するにあたり、どのような道路にするか検討を重ねてきた。町では平成14年度から「街なみ環境整備事業」を実施しており、検討結果を受けて舗装の変更などを行う予定になっている。道路づくりを考えるにあたり、地元住民を主体とする検討会議と町の意見が合わない内容もある。大きな争点となっているのは車の通行規制についてである。歩きやすい環境づくりのために町は車の通行規制を提案しているが、検討会議は商品や備品の搬出入がしにくくなったり、宿泊客の利便性が損なわれるのは困ると猛反対している。双方の意見を汲んだ計画づくりが必要であろう。
また、JR二見駅から夫婦岩に続く道を「夫婦岩表参道」と名付けてパンフレットを作成・配布するなどのPR活動や、空き店舗を活用したギャラリーの運営、道沿いの各店舗の前に行燈を灯す活動などを行っている。
まちづくり検討会議以外にも、住民による熱心な活動が展開されている。旅館の中には、歴代の諸皇族が宿泊した由緒ある旅館二見館別館・賓日館(ひんじつかん)もあるが、二見館の休館と同時に閉鎖され、存亡の危機にさらされていた。しかし賓日館を愛する人々の集まりである「二見浦・賓日館の保存と活用を考える会」の熱心な活動が実を結び、町が買い取ることが決定した。
このように、HOPE計画をきっかけとして始まった歴史を活かしたまちづくりが、少しずつ形になりつつある。今後、道路や町並みの修景、賓日館の整備が進んでいけば、再び観光客の注目を集め、賑わいを取り戻すことにつながっていくのではと期待される。
(情報提供:二見浦まちづくり検討会議代表 南家幸人さん)
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表参道
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基準に従って建具を改修した商店
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検討会議で運営する「夢ギャラリー二見」 |
沿道には高層マンションも
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賓日館 |
検討会議会長の南家さん(右)
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