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大須のレトロ建築、取り壊し始まる。 

 このメールが届くころには、工事が始まっているかもしれませんが、大須にあるレトロな建物が取り壊されることになりました。それは万松寺通と南大津通の交差点にある、天津甘栗で有名な今井総本家のビルです。建物の外観は商店街のアーケードや看板で埋め尽くされおり、注意して見ないと特徴的なアーチ型の窓に気付かない人もいたかもしれません。

 この建物は、地下1階、地上3階の鉄筋コンクリート造で、大正15年(昭和元年)にできたそうです。日本で初めての鉄筋コンクリート造の建物が建てられたのが大正5年ですから、名古屋では最も古い鉄筋コンクリートの建物のひとつでした。ちなみに最近納屋橋の象徴となりつつある旧加藤商会も鉄筋コンクリート造ですが、これよりは古いようです。

 昭和20年代に今のオーナーである今井氏が購入し、店舗と住宅として使っていたのですが、中はかなり複雑な改装がなされ迷路のようになっていました。かろうじて当時の様子がうかがえる3階のホールは非常に天井か高く、明るく気持ちの良い場所でした。戦争で焼けたという木片もあり、歴史を感じる空間でした。

 屋上に上がり商店街を見渡すと、物干台や屋根が複雑に入り組んだ光景が、圧倒的な迫力で目に飛び込んできます。大須の長い歴史の中で、商店街の栄衰とともに壊したり増築したりを繰り返してきた商いの力が形となった光景です。まもなくここから見渡せる商店街の家々は再開発のため取り壊されます。名古屋でも一番の高密度な光景のひとつが無くなります。新しいビルになっても、時代とともに商人たちに育てられ、この光景のような迫力を生み出せるものになってもらいたいと思います。

(2002.3.5/堀内 研自)