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「新・中村長屋暮らし―向こう三軒両隣・一緒に住まうまちづくりワークショップ―」

 今回初めて知ったことであるが、名古屋駅界隈には意外とたくさんの長屋が残っている。戦争で空襲を受けたところは(当然のことながら)新しい建物に建て変わっているが、焼け残ったところには戦前の住まいである長屋が当時からの住人と一緒に歴史を刻み続けているのである。今回名古屋大学小松尚研究室と子ども建築研究会ではこの長屋にスポットを当て、高校生・大学生に呼びかけを行って長屋の現代的な使い方を考えるワークショップを開催した。ワークショップは3月21日から23日の3日間開催され、4日目にその成果として制作された模型の展覧会が近くのギャラリーで行われた。

 ワークショップは名古屋駅にほど近い予備校の教室を会場に行われ、高校生21名、大学生25名、建築家、大学の先生などの社会人約10名の総勢50名以上が参加し、高校生と大学生・社会人がペアになって長屋再生計画の模型を制作した。1日目には建築や長屋に関するレクチャーと現地見学およびグループでの計画案を検討し、2・3日目には模型の制作を行い、結果、19の模型が完成した。

 再生計画の対象となったのは、名古屋駅から鉄道の線路より東側にあたるところに建つ築80年以上の3軒長屋で、駅から徒歩約7分の位置にある。3軒のうち2軒は住み手がおり、1軒は空き家である。再生計画はこの3軒全体を対象とし、計画条件として、「長屋の建物外形や構造を尊重しつつも少々の改変はOK」、「3軒の中に制作者(およびその家族)が住む住居機能および商業機能や公的サービスなどの非住居機能を入れる」ということが提示された。模型は30分の1のサイズで段ボールを中心とした素材を用いてつくられた。完成模型をみると、「非住居機能」の用途としては、診療所やミニシアター、屋内に樹木を植えて公園(!)にするなどといった提案がされており、また、戦前の郷愁漂う長屋と現代的なピカピカ(?)の素材を組み合わせるといった若々しい試みもあり、見ていて楽しい作品ができあがった。

 また、ワークショップの期間中や展覧会の日に、近所で実際に現代的な賃貸住宅として再生された長屋(向井一規氏設計)を見学するという企画もあり、そちらも非常に見応えのあるものであった。

 小松研究室では、今回の取り組みをきっかけとして、建築を使い続け、まちに住み続けるという観点から名駅付近の長屋に光を当てる取り組みを今後も行っていきたいということである。経済成長がゆるやかになり、不動産も投資の対象から利用価値を考える時代となってきた現在、戦争、そしてバブルの時代にも負けずに生き抜いてきた長屋にもやっと日のあたる時が来たということだろうか。立地条件がよいとどうしても「高度利用」のプレッシャーと戦わなければいけなくなるが、せっかく今日まで残ってきた名駅の資産が活かされるといいと思う。


写真提供:名古屋大学小松研究室


再生計画の対象とした3軒長屋

模型の制作風景

完成模型「桜道」

完成模型「cooperation」

再生された長屋の見学

(2002.4.22/伊藤彩子)